ばあ様は嘆く。
「あ〜あ。ぽっくり死ねるんならまだしも、いつまでもヒクヒクした状態が続いたらみんなに迷惑かけるし、あ〜、いやだな〜。」
ヒクヒクって。この後、「こうなるとは思わんかった。満州荒野を駆け回っとったのに」と続く。
本人は弱っているつもりだが、元気である。足の浮腫みが気になるのは確かなのだが、トイレも自分で行くし、食後のお皿洗いも必ずしてから母に返すし、突然棚などの拭き掃除を始めることもある。
デイサービスは、行く日の前夜は気が乗らないこともあるようだが、当日の朝は結構いそいそと用意をして出かけるらしい。だが、「あそこに私みたいな年寄りはおらんよ。みんなカチカチ元気そう。」と、足元がおぼつかないので早く動けないばあ様は、コンプレックスを感じているようにも思える。あそこはある程度の体操はやってくれるし、運動する時間もあるのだが、デイケアではないのでリハビリがない。(デイサービスとデイケアはリハビリの有無の違いらしい。)ケアマネがこのデイサービスでいいと思って紹介してくれたし、確かに大所帯でないので良いところもあるし、職員も一生懸命で好感が持てるのだが、歩く練習をもっと集中してやって欲しいなあと思ったりする。
この間、「楽しんで行っとると思うとるかもしれんけど、楽しいふりしとるだけなんよ」と言っていた。ほんまか。「もうその年になったら、楽しくもないのに気ぃ使って楽しいふりせんでもいいじゃん。」と言うと、ため息をついていた。デイの連絡帳には、他の人と意欲的に話をしたとか、積極的に色々参加していたとか書いてある。その日、デイに行ったことは覚えているが、何をしたかはきれいさっぱり忘れていることが多いので、本当のところはよくわからない。「すぐきれーに忘れるんよ。」と自覚して落ち込むこともよくあるので、「今日何した?」などという質問はしないことにしている。楽しいふりをしているという割には、休まずに行っているので、何かおもしろいこともあるのではと思う。

ときどき実家に早めに行って、ばあ様を外に連れ出して家の前を一緒に少し歩くのだが、もっと頻繁に行った方がいいんだろうなあ。しかし、この超短い散歩に出る前も、「こんな格好じゃいくらなんでも」と着替えが始まり、髪を結いなおし、なかなか準備時間が長い。近所の人に見られたらまずいと思うようだ。で、外で5分も経てば「疲れた。もう帰る」となるので、準備時間の方が長い。ま、身だしなみを気にするというのは良いことだ。