もうすぐ97歳になるばあ様は、薄切りの牛肉を買うとお皿に並べて冷凍保存している。肉を一口サイズに切り、一枚一枚重ならないように広げてお皿の上に並べる。フグの刺身か、というくらい丁寧に並べる。そしてお皿にラップをかける。お皿1枚では1パックの肉をすべてのせられないので、大きな平皿3枚を使う。冷凍庫はせまいので、皿を斜めにかたむけて収納する。
冷凍するとき直接ラップで包めば、そのまますぐに電子レンジで解凍できるし便利だよ、と言っても、長年この皿方式でやってきたので今更新しい方法を試したりなどしない。解凍は、必ず自然解凍である。電子レンジ使えば早いよ、と何度教えたか。「別に急がんからいい」と自然解凍一筋である。
父は、「あれがあの人のリチュアルなんだから」と言う。邪魔してはなるまい。
まあ、薄切り肉を売っている日本ならではの話である。
そういえば、アメリカ留学時代、別の州に住む日本人の友人と電話で話したとき、「なんでこっちの牛肉ってあんなに下品に切ってあるの!」と怒っていたな。薄切り肉、日本の美。