青い光が見えたから 16歳のフィンランド留学記

青い光が見えたから 16歳のフィンランド留学記

フィンランドの高校のシステムが知りたくて読んだ。自由度の高い、かつ勉強はしっかりさせるシステムのようである。3年で卒業しなくとも、取りたい単位が多ければ3年半や4年という人もいるらしい。いいねえ、オプションがあるという制度は。
留学先での勉強が大変というのは当たり前なので、そこら辺の苦労話は特に感ずるものはなかったのだが、自分が16歳で渡米したときのことを思い出し、本に書いてある彼女の出会った人々があまりにも良い人達であることを羨ましいと思うとともに、「良い人達のことしか書いていないのか」とも勘ぐってしまった。いや、あたしが留学当初にいやな思いをしたからと言って、そういう思いをしなかった人が嘘をついているなんて言うつもりは全然無いし、そんないやな経験はしないことに越したことはないわけなんで、I'm really happy for herではある。だが、暖かい人達との交流について読んでいると、「そんなおとぎ話みたいな優しい町がこの世にあるの〜」と思ったってわけよ。
著者は、脅しと暴力で生徒をコントロールしようとするような教師のいる中学へ通い、自分を殺して生活していたらしい。私も日本で異常な高校に通っていたので、彼女の息苦しさはよくわかる。ルーズリーフを使っていた男子生徒を数学の教師が見て、「人と違うことをするなー!!」っつって、いきなり顔を殴ったりとかさ。「全員ノートを出せっ!」と怒鳴られて、いわゆる大学ノートを使っているかどうか確認されたもの。夏休みにあるアメリカでのホームステイの知らせがクラスに来たとき、担任は「受験勉強もせずにアメリカなんかに行くバカはいないだろう」と言ってたなあ。その他もろもろ。
そういう意味では、渡米してからの高校生活は、そりゃーもう人間的で自由で良かった。「大学進学」がゴールじゃないから。大学入試合格というひとつのゴールに向かって勉強するわけじゃないから、その分、毎日の勉強をちゃんとしていないといけないという大変さはあるが、その方がよっぽど勉強らしい勉強だと感じながらやっていた。「テストに出る」という理由で勉強するんじゃないからね。
著者は、ずっとフィンランドに住んでいるような気がすると3年生の頃には感じるくらいうまくassimilateしていたようだが、ずっと住み続けて、今後identiy crisisを経験することはあるのかなあ。私は渡米4、5年後くらいに「あら、なんか日本にいてもアメリカにいてもなんか居場所がない感じ〜。とほほ」と感じて、その後はそんな気持ちをシェアする相手もおらず(っつーか、共感してくれる人がおらず)、もんもんと悩んでいた。若い頃2ヶ国以上と深く関わった人全員がこういう気持ちになるとは限らないが、よく聞く話ではあるだろう。高校を終えてから渡米した姉にちらっと電話で相談した際、「何それ。あたしはそんなの全然わからない。あんたって、すぐ悩んで暗い。ウツウツ美術史でも勉強してれば」と言われて、余計に「Kay、この世にただ独り」ってとほほ気分になったなあ。
Anyways, 著者は暗い中学生活の後にフィンランドで希望を見つけて何よりである。