今回、ソウルで滞在したのはserviced apartmentである。サイトの英語ページには「World class residence」などと書かれていて、立派そうである。
実際行ってみると、「ワールドクラス」と呼ぶには、「韓国版JAROを呼べ」と言いたくなるところであった。ワールドクラスを期待しなければ、「こんなもんか」という感じ。まあ、ワールドクラスって何、という疑問もあるわけだが。
そもそも、最初にホテルにたどり着いてタクシーを降りようと足元を見たときに目についたのが、アダルトエンターテイメントの広告。名刺サイズのそういうカードが地面にばらまいてある。第一印象は悪い。蛍光灯のともるロビーもなんだか陰気で、フロントで応対した男も横柄で感じ悪い。ここに2週間いなければならんのか、と気落ちした。
部屋は、広めのワンルームマンションのようなところ。玄関で靴を脱ぐようになっている。改装済の部屋だったので、こざっぱりしていた。ただ、バスルームは改装されていなかった。改装するなら、まずはこのバスルームが先でしょ、という見た目と作りであった。シャワーだけで浴槽がないのは別にかまわないのだが、トイレとの境がなく、おまけにまともにトイレに向かってシャワーの水がかかってしまうところにしかシャワーフックがついていない。浴びるときには、シャワーを手で持ち、壁側に水がかかるようにし、シャンプーしているときなどは水をとめておくという工夫が必要であった。節水になっていいのか。冬は寒いだろう。床はつるつるのタイルだし。お湯も調整が難しく、適温だと思って浴びているといきなり熱くなるし、それで温度を下げると今度は水になる。
おまけに排水が悪くて、洗面に水を流しているだけでも床が水浸しになるので、メンテの人に直してもらった。水浸しになることに誰もスタッフが気づかなかったのは、清掃スタッフがバスルームの掃除をちゃんとしていないからということに後で気づいた。3日に一度、シーツの取り換えと掃除に来てくれるのだが、毎回バスルームは掃除された痕跡がなかった。洗面も汚れたまんまだから、当然水を流していない。だから排水がつまっていることに気付かない。
タオルの交換も言わない限りは3日に1回である。リクエストすれば持ってきてくれる。トイレットペーパーが残り少なかったので頼んだら、ロリーポップかなんかを口にした清掃スタッフが持ってきた。ワールドクラスなカジュアルさである。

比較的新しそうな洗濯機と電子レンジが備えてつけてあるのだが、ボタンは全部韓国語なので使い方がわからない。自らをワールドクラスと呼び、数ヶ国語のサイトを作って外国人の宿泊客も募っているのであれば、簡単な説明を韓国語以外の言語でも書いておいてほしいと思うが、求めすぎなのか。テレビもなんでか知らないが映らなくなったので、フロントに電話し、スタッフに部屋まで来てもらった。そして、その人が「こんなところじゃなくて、五つ星ホテルでも働けるだろう!」と言いたくなる素晴らしいスタッフであった。気が利く、機転が利く、労力をおしまない、英語がうまい、礼儀正しい、仕事が速い。彼がいたから、私はこの2週間をあそこで過ごせた。彼に会う前は、私だけホテルを変えようかと思っていたくらいなのである(Pを見捨てようとしていたあたし)。到着した日に感じの悪かったフロントの男は、その後も目がまともにあってもあいさつもしないという態度であったが、この優秀スタッフは、私を見ると、"Good afternoon, ma'am"だよ。

バスルームを除けば、部屋自体の居心地は悪くないので、滞在日数を重ねるにつれて環境にも慣れた。周囲の環境はといえば、高級ホテルもあれば、オフィスビルも乱立しており、大きな病院もあるし、そしてラブホテルとおぼしきものも堂々と立っているというところであった。小さいスーパーや、コンビニ、カフェ、食べるところも色々あり、便利であった。

到着した夜に地面にばらまいてあったいかがわしい広告であるが、他でも道路にところどころに撒いてあった。撒き餌か。