ばあ様の入れ歯を探しまくるの巻。

ばあ様が寝る前の準備をしている間、私は、入れ歯がちゃんと洗ってあるか確認するために容器を開けた。水が入っているだけで入れ歯は無い。まさか湯のみに入れてそのまま放置か、と食卓を見たが、どの湯のみも棚に片付けてある。
「入れ歯どこに置いたん?」と聞くも、「え?無い?」と当然ながら記憶にあるわけはない。
キッチネットのゴミ箱も見たが、無い。「まさか、お風呂に忘れたとか」とばあ様は言うが、お風呂に行くときに入れ歯ははめていなかった。
「おかしいね〜」とばあ様はのん気に言いながら、私は無言で多少イライラしながら、二人でうろうろと部屋中を探す。「まさかここに入れとらんよね」と冷蔵庫を開けるばあ様。そこはさっき私が確認した。無かった。
鏡台の引き出し、サイドボードの引き出し、タンスの引き出し、と「まさか」というところを探すも、無い。
母に報告すると、「違う目で見てみましょう」とサーチ隊に参加。キッチネットのゴミ箱から再確認。そして、ベッドの横にあるくず入れを持ち上げて振る母。「なんかカタカタ音がする」と言うので見てみると、捨ててあるティッシュの下にティッシュでくるんだ入れ歯発見。さすが母。私もこのくず入れは見たのだが、ティッシュを触るのいやで、見ただけですませてしまった。次回からは振る。
おそらく、テレビを見ながら入れ歯を外し、とりあえずティッシュにくるんでおいて、それを忘れてゴミだと勘違いして捨てたのだろう。ティッシュにくるむのは、入れ歯にしろ、リテーナーにしろ、ピアスにしろ、危ない。ティッシュにくるんだピアスを間違えて捨てたことあるもんね、あたし。泣いたよ。でも自分が悪い。

「入れ歯洗浄剤を入れとくよ」と入れ歯を容器に入れ、部屋を出た。「こういうことが段々増えるようになる」と台所から父の声が聞こえる。台所に入ると、味噌汁くさい。味噌汁の鍋が沸騰している。「鍋!」と私は叫びコンロへダッシュ。父は「おお!」と急いで立ち上がる。父が温めなおすためにかけた鍋。「すみません」と父。ばあ様のこと、言っちゃおれんぞ。