Pとヘルシンキのストックマン(デパート)へ行った。
私の経験では、このデパートで店員に話しかけられたことがほとんどない。過去、食器売り場で1回だけである。試着をしたり、ランチョンマットを何枚も手にしながら選んでいても、話しかけられたことはない。私が明らかに外国人だからというよりも、Pに言わせると、店員に放っておいて欲しい客が多いから、店員も話しかけないらしい。それはそれで楽と言えば楽なのだが、「もうちょっと客の相手してよ」と言いたくなるのは私が日本のデパートに慣れているからだろうか。私だって店員に後ろにくっついて回られたり、聞いても無いのに「これ、今よく売れてるんですよ〜」などと慣れ慣れしく話しかけられるのはものすごく嫌いだが、「いらっしゃいませ。何かお探しですか」くらいであれば、全然かまわない。むしろ、探し物をしているときには助かる。
昨日はトレンチコートを探していたのだが、まず店員が見当たらない。一人も。気にせず何着でも試着し放題というのは楽だが、プロの意見も聞きたいではないか。まあ、どの程度プロなのかが謎といえば謎である。日本のデパートのようにそのブランド毎に店員がいない。ゆえに商品知識がどうなのだろうかといぶかしむわけである。だが、世界的に有名なブランドのセクションであれば、ちょっとくらいはサービスを受けたいと思うわけよ。Pは「social democracyだ。高い服だろうが、安い服だろうが、この国では客は平等にattentiveなサービスを受けることはできないのだ」と笑う。なんじゃそれは。
店頭に置いてあるコートは、ウールの冬仕様のものがほとんどになっており、今羽織れる合いのコートがあまり見当たらなかった。ババババババーバリー以外では。サイズもあまり残っておらず、かろうじて3枚私にフィットするのがあった。タイムレスなデザイン、長く着られる、でも考えていたprice rangeより高い、どうしよう、と悩みつつ試着していて気がついた。1枚のコートのポケットのボタンが取れている。あれーっと思い、脱いで全体をよく見ると、襟にシミもある。そしてもう1枚のコートも、ボタンを留めようと思ったら、一つ取れていた。商品チェックしてくれ。これが日本の大型スーパーの婦人服売り場なら「しょうがないわね」と思うだけだが(だが、スーパーでもボタンの取れたものはなかなか置いてないと思う)、バババババーバリーでこれはないではないか。
ボタンの取れた汚れたコートを買う気にはなれない。迷うこともなく、残り1枚のコートに絞ることができた。それでも他のメーカーのも見てみよう、と隣のセクションに行くと「149ユーロ」のウールのコート。えらい値段の差である。「ほら、social democracyだ。日本のデパートのように高いメーカーだけを別のフロアに集めるのではなく、安いものと隣同士に並べて差別しないのだ」とP。すばらしい平等主義。
でまあ、いいものを見て触ってしまうと、それが欲しくなる。とはいえ、バーバリーにしてはリーズナブルなラインで、十数万とかするようなものではない。私にとってはとても高価なものだが、思い切って買うことにした。
店員が見当たらないので、「レジ」と書かれているカウンターへ自分で持っていく。にこやかに店員はデパートの紙袋にコートを入れてくれる。そのまま。カバー無し、ハンガー無し。見事なまでの商品のみの受け渡しである。「だからsocial democracyなのだ。何を買っても平等にデパートの紙袋なのだ。」とP。
そしてデパートの駐車場へ。何か買おうが買うまいが、デパートのカードを持っていれば、最初の1時間だけ無料というシステムは利用者全員に適用される。それ以上の割引は無い。高い買い物をした人の特別扱いは無いのである。「social democracyだ」とまたP。
平等は結構だが、汚れた商品をそのまま放置していたり、試着室の床が埃だらけで埃玉が舞ってるっていうのは、無しにしようよ。
とりあえず、コートは気に入ったのを見つけることができたので良かった。カバー買わないと。