ばあ様の入院時の夕食は17時半であった。退院してから数日は、17時半は早すぎるだろうと18時くらいに夕食を出していたのだが、17時半に夕食、というリズムが出来てしまっていたらしく、お腹が空いて機嫌が悪くなるので、17時半に出すことにした。病院では、「5時半はいくらなんでも早すぎる」と毎日文句言ってたんだけどね。
だが、夕食が早いもんだから、寝る準備をした21時過ぎにお腹が空くのである。20時くらいにおやつとして、せんべいとか果物をあげており、それで満足して寝る場合もある。しかし、ここ最近、一度電気を消して寝たものの、22時過ぎにまた起き出して食べずに取っておいたおやつやミカンを食べていたり、この間など、夜中の2時にトイレに行った後にせんべいを食べていた。そこで、徐々に夕食の時間を遅らせて、ここ数日は18時にしているのだが、それでもお腹が空くらしいのだ。認知症の症状のひとつなのか、単に食べ盛りなのか。
別に食べることはこの際どうでもよく、もう98なんだし、食べたいんなら好きなときに食べりゃいいと思っているのだが、その後口をゆすぐだけで歯を磨かない恐れがあるので困るのである。人工股関節は細菌に弱いらしく、虫歯や風邪は速やかに直すべきというのを読んだ。大体ばあ様には既に虫歯があり、訪問歯科医に進行を止めるための薬を塗るだけの処置を2週間に一度してもらっているのである(毎回、「歯医者なんかに用はない」と非常に不機嫌になる)。抜歯は股関節手術の執刀医に止められているし、治療をするには口を30分は開けっぱなしにしていなくてはならず、水も喉にたまる状態になるため、98のばあ様には体力的に難しいかもしれないということで、進行を止めるだけという案を歯科医が出したという次第である。何歳になっても、日ごろから歯のメンテをしっかりしておかねばならぬという良い教訓である。
で、ばあ様は私に「歯磨きしてよ」と注意されるのがうるさくてたまらない。2時過ぎにせんべい食った後に歯を磨くよう言ったときは、だまって磨いたものの、その後ベッドに入りながら独り言のように「うるさいよ、まったくっ」とつぶやくというクソババーぶりであった。だったら好きにすれば、あたしは知らないから、と言いたくなるわけだが、結局本人は虫歯と人工股関節の関係の話などすっかり忘れているわけだし、やはりこちらが気をつけてやらねばならぬのかと思うわけである。げっそり。
今日も一度寝たと思ったら、ごそごそ音がするので覗いてみると、食パンを取り出していた。食べさせたくないのなら食料を保管できないようにすればいいわけだが、冷蔵庫の電源がついていないことをあまりに嘆くので、精神的安定のためにもつけることにしたのだ。しゃがむ姿勢を取らせないということが第一の理由であったのだが、毎日毎日「なんで冷蔵庫がついていないのか」と不機嫌になり、「ああ、冷蔵庫がないとはなんと寂しいことか。生きる楽しみは無いも同然。こんなに支配されて、私の人生はめちゃくちゃ」などと言うのである。You are such a drama queenと内心思う毎日であったが、執刀医が検診で「もう何をしてもいい。痛い姿勢は自分じゃしないでしょう」と言ったので、晴れて冷蔵庫のコンセントを入れるということになったのである。
でもって、夜中のつまみ食いである。本人は、寝る前や夜中に物を食べるということはいけないと思っているようで、食べているところに私が入っていくと、さっと隠す。私はつとめて明るく「お腹空いたん?なんか持ってこようか」と言うのだが、眉間に皺を寄せて「いーえ、結構。私が好きなようにします」と不機嫌全開。「冷蔵庫にリンゴがあったから、あれ食べれば」などと私が言うと、「もう90年以上生きてきて、私がいいと思うようにしてきたんだから、自分で全部しますっ」とばあ様。こっちもむかついてきたので、「食べるのはかまわんけど、必ず歯は磨いてよ」と言うと、「わーかーりーまーしーたっ」とババー。こういうやり取りのとき、脳みそはしっかり機能していると感じるんですがどうなんでしょうか。後からうがいをする音は聞こえたが、磨いたかどうかは不明。

98歳で自分でパンを焼いたり、りんごを剥いたりできるというのはすばらしいことなんだけどね。お腹が空かないように9時ごろ夜食を出そうかと母と話しているところである。この間、「夜にお腹が空くみたいだけど、夜食を食べるようにする?」と聞いたところ、「夜にお腹なんか空かんよ」と一笑に付された。
うどんとかおむすびとか、そういったものは「寝る前に食べてはいけない」とは思っているので、食べないだろうなあ。おむすび持っていっても、そのときは食べずにとっておいて、夜中に起きて食べそうだわ。