ばあ様の病院は、土日祝日が休診であるため、リハビリも休みである。今週は、3-day weekendだった上、火曜日は微熱があって「だるいからリハビリなんかしない」と頑なにベッドから離れようとせず、4日続けて歩く練習をしなかった。昨日も微熱があり、だるい、しんどいと元気がなかったのであるが、ずっとあの病室にこもっているから精神的にもだるくなっているという感じもした。23日も祝日で休みとなるので、また休ませるわけにもいかないと思っていたが、案の定昼間リハビリの人が迎えに来てくれたのに断ったらしい。
夕方、トイレに行くためにベッドから立ったばあ様が、数秒立ったと思ったら、すとんとまた座り込んでしまったのを見て、「絶対リハビリに行かなきゃだめ」と判断し、母に看護師に相談するよう頼んだ。しばらくすると、えらく元気な看護師が「リハビリの準備してくださいね〜」と車椅子をベッドのそばまで持ってきた。もう、有無を言わせぬ、という感じである。こりゃいいわ、と私も「あたしも一緒に行くからがんばろう」とばあ様を励ましたところ、看護師のパワーにも負けたのか、案外素直に起き上がって髪を整え始めた。極度の寒がりなので、レッグウォーマーを母が履かせ、私はカーディガンを羽織らせ、ばあ様も髪を結びなおして準備完了である。
私は初めてリハビリの部屋に行ったのだが、ああ、なんという古さ。この病院は改装をするという気持ちはないのか。そして、看護師も「冷房が効いてますね」というくらいキンキンに冷えていた。私も寒い。ばあ様は、「ちょっとここは寒いっ」と不機嫌である。急いで私は肩掛けを取りに部屋に戻った。
戻ってくると、ばあ様は療法士の男性に手を引かれてマッサージをする診療台まで歩いていた。「前より歩けんくなっとるわ」と自分でもつぶやいているばあ様。何しろ、4日間練習していないのだ。若い人だって、4日間トイレ以外は寝ていたらふらつくだろう。私もインフルエンザで4日寝込んだときそんな感じだったもの。
このリハビリの大問題は、平行棒につかまりながら歩くやつの棒が金属なのである。冷たいものや寒いのが何よりも嫌いなばあ様。おまけに冷房の風が直接当たる位置にある。最悪である。よく冷やされた金属の棒などばあ様が素直に触るわけがない。カーディガンの袖をひっぱり、直接手に触らないようにするのであるが、これだとすべって危ないのである。今日は療法士の男性がばあ様のパジャマのズボンを持って一緒に横を歩いてくれていたが、彼はばあ様の棒の持ち方を注意することはなかった。しかし、別の患者を診ていた女性の療法士が、「ちゃんと手で握らないと危ないよ!」と叫びまくりである。私も注意したのだが、「だって冷たいんだものっ!」とばあ様は怒っている。そばについている男性療法士がなーんにも言わないので、私がワーワー注意するのもなんだかなと思って、だまってみることにしたのだが、女性療法士はその間も何かと叫んでいた。
カーディガンの袖で手をくるんでいるため、よくすべり、上半身が前のめりになってしまう。途中、男性療法士が「もっと腰をまっすぐして歩こう」と言うと、すっと腰を伸ばして姿勢をよくしていた。歩くことそのものは、割とちゃんと歩いていたが、つかまるものがなくては無理のようだ。2週間前は、廊下を勝手に一人で歩いていて、看護師を仰天させたばあ様なのであるが(「しっかり歩いてらっしゃいました」と目撃者の弁)、あのときと比べるとやはり弱っているのではと思う。ここしばらく食欲も元気もなかったということもある。
滑り止めのついた軍手かなんかを探してみようかと思うのだが、療法士がなんと言うかなあ。それでもすべるかもしれないが、カーディガンの袖よりはいいような気がする。大体、設備が古すぎっつーの。前の病院じゃ、手すりは木製だった。
嫌がっていたリハビリではあるが、やはり気分転換になったようで、寒くて冷たかったという怒りも手伝い、病室に戻ったときには結構エネルギッシュな感じになっていた。母も、表情が行く前とは変わっていたと言う。寝てばかりじゃいかんのだ。
あー、早く退院準備を整えたい。ケアマネに会ったり、家の改修をしたり、福祉用具を揃えたりと、まだまだすることはたくさんあるのだ。祝日が重なるのでなかなかプロセスが前に進まない。ばあ様は、長い間病院にいることがストレスになっているようである。私が、「退院までもうちょっと我慢してね。そしたら、もっといい設備があるところで通院リハビリをしよう」と言うと、「もう病院へは行きたくないっ」ときっぱりはっきり言った。いやあ、やっぱりリハビリはしないとねえ〜、と答えておいたが、まあ、歩く練習というのは、家の中でもできないことはないのかな。訪問リハビリというのもあるだろうし、以前のように針の先生に来てもらって腰の痛みなどは診療してもらうことは可能である。
もう家を離れて2ヶ月経つので、住んでいた家がどういうのか思い出せないと言う。思い出せなくて焦ってこれ以上不安になっても困るので、「思い出せなくても大丈夫、大丈夫。」と言っておいた。97歳の割りには本当にしっかりしているとスタッフの皆さんおっしゃり、確かにそうだとは思うのだが、入院前はもっとしっかりしていたことを知っているので、なんだかな、と思ってしまう。
とにかく、「二度ところばないように!」と必死で祈る毎日である。