父がばあ様の病室にいたとき、看護師が来て「こちらはどなたですか」とばあ様に聞いた。ばあ様は、「私の父親です」と答えた。そしてクククと笑い、「息子ですよ」と言ったそうな。
父が、「私の父親です」まで話したときには、「ついにばあ様、そこまでわからなくなったか」とぎょっとしたのだが、まさか冗談だったとは。やられた。

ばあ様が手術してから1ヶ月経つが、ベッドの隣に置いた携帯トイレを、こちらが手助けをしなくても見守りをするだけの状態で、一人でうまく使えるまで動けるようになっている。というか、手術の次の日に車椅子に座るというリハビリが始まったわけだが、車椅子を用意していた作業療法士が「ええっ、昨日手術したんですよね」と驚くくらい、いきなりすっくと起立したりしていたばあ様なのである。まだ痛みはあるらしく、調子が悪いときは痛い痛いと言う。人によっては、骨は治っても痛みがなかなか取れないということもあるらしい。母の友人は、術後1年半経つが、まだ痛いんだとか。個人差のほか、折れ方や治療の仕方によっても違うんだろう。別の友人は、手術後2週間で歩き、今は車を運転して活動的に飛び回っているらしい。色々よね。ばあ様は一人で歩くのはまだ無理であるが、「昨夜は一人で歩いてトイレに行ったよ」と混乱していることがある。「それは夢を見たんよ」と言っても、「いーや、行ったよ」と言い張る。今の状態でそんなことをされては危なくて仕方ないが(ゆえに夜はベッドの柵を固定している)、いずれは一人で行けるまでに回復することを願う。介助無しでトイレに行けるようになることが、現在の目標だ。