今日のばあ様は朗らかであった。新しい環境に慣れてきているのだろう。とはいえ、後で母から聞いた話によると、昼間は昨夜に引き続き、不機嫌で毒を吐き続けていたらしい。
あ、でもいつものばあ様らしい嫌味はあった。エアコンをあまり強く効かせておらず、ばあ様の部屋は少し蒸す。「この部屋蒸し暑いでしょ?ケチだからよ」と、一応声を落として言う。「色んな患者がいるんだから、一番弱ってるひとにエアコンの温度をあわせるんじゃないの」と言うと、大きく頷きながら「そうよねえ」と納得したように答えるのだが、しばらくするとケチ発言が出る。しかし、エアコンが効いていれば、寒い寒いと文句を言うのである。前の病院でそうだった。理由がどうであれ、部屋が少し蒸すのは確かなので、私が持っていた扇子を置いていこうとしたのだが、そこはやはり遠慮魔な人なので、何度使っていいよと言っても断りまくる。「今度うちわを持ってきて」とリクエスト有り。扇子よりうちわがお好みらしい。
今日は、Pの写真を持って行った。2日前にPの話をしたことはきれいさっぱり忘れていたが、それは想定内である。ばあ様は非常に興味を持ち、何度も同じ質問をし、そのたびに私もまじめに答えるので、同室の中村さん(仮名)は、私のプライベートライフのことをすべて暗記したことだろう。メガホンを使って、静かに話をしていたつもりではあるが、何しろ部屋がせまいので中村さんに聞こえないわけがない。
母の話によると、中村さんも股関節を骨折され、手術をしたらしい。母より少し年が多いくらいの方である。私の知り合いにも股関節を折って入院した80代の女性がいる。本当に多いようで、ばあ様の転院先も探しに探してやっと今のところで引き受けてくれることになったらしい。そこここの総合病院で、かなりの数の人が待機リストに載っているらしい。医師不足、ここに見たり。なんとかしてもらわないと。
Pの話を聞いて、「元気が出た」と言うばあ様。「今度彼氏に手紙書くときは、おばあちゃんがよろしく言っとったと伝えてね。もしKayちゃんいじめたら、おばあちゃんがやっつけに行くからと書いといて。」と拳骨をふりあげて笑う。Be very afraid, P. うちの母などいつもPの味方なので、こういう台詞は実に新鮮であった。
さて、明日もPの写真を持っていって、記憶にとどめてもらうようにしよう。