デパートの下着売り場の試着室にはボタンがあり、試着が終わった時点でそれを押すと店員がやってくる。見られたくないので押さずにいると、「いかがですか」と声をかけにくる。なんというか、attentiveなのだが、少々鬱陶しいと感じたのも否めない。店員との相性というか、そういうものも関係しているとは思う。全面的に信頼してお任せしようと感じる人と、なんとなくヤだなと感じる人がいる。相手もそう思っているだろう。
とはいえ、試着室のカーテンを勝手に開けて入ってくるということはありえないので、そこは安心である。アメリカで当然のように入ってこられた経験がある。二十歳のとき、「ビクトリアの秘密」においてである。ちょっと大人なナイティを試着していた。お初である。若い店員は、"How are you doing?"とフツーにカーテンを開けて試着室に入ってきた。既に着ていたとはいえ、まさか入ってくるとは思っていなかったので、かなり驚いた。すると、"My mom bought the same one and she loves it."と言った店員。じゃ、二十歳の若者が着るようなものじゃないってことかい、とかすかに私はイラついたのであった。実際、対象年齢幅は広いデザインで、中年の人が着てもおかしくはないものであったが(普通サイズの人なら)、店員として売り上げを伸ばせる台詞ではないだろう。といっても、結局買ったんだけどね、それ。
アメリカの店では、高校生や大学生のバイトが店員をしていることがあるので要注意である。高い店はさすがにプロ意識の高い大人が働いているのだろうが、買い物したことがないので知らない。モールの洋服店靴店など、商品知識も乏しく、思いつきのイイカゲンなことを言い、レジの使い方を知っているだけの店員が多い。デパートでもそうである。実際、私の知り合いの学生が婦人服売り場でバイトをしていた。もっともこれは20年前のアメリカの話だが、あの国の接客にそう変化があるとも思えない。
一般的に、接客の丁寧さにおいては日本は素晴らしいと思うが、日本においてもおかしな店員がいるのは事実である。同じく二十歳くらいの頃の話だが、ファッションビルに入っている店でウールのパンツを試着したことがある。裏地がついておらずチクチクしたので、様子を伺いにきた店員に「ちょっとチクチクします」と言うと、「チクチクしないのがいいんですか」と言われた。そこでは何も買わなかった。
また、5年くらい前、ジーンズを試着し、「ちょっとウエストがゆるいです」と言うと、店員は「ベルトをするといい」と言い、なんと自分がしていたベルトを外して私に渡したのである。生暖かいベルト片手に、「早く帰りたい」と思った私。そこでも何も買わなかった。
デパートならばここまで変な店員に会ったことはないが、年齢の高い店員が結構押し付けがましかったりして疲れることがある。それでオンラインでの買い物が圧倒的に増えるわけである。同じものでもオンラインで安く手に入ったりするしね。
今、ローファーを買い換えたいのだが、どこで買うか迷っている。靴は試着しないとなあ。オンラインで買ったこともあるが、失敗したことも何度かある。今すぐ必要なわけではないので、しばらく放置しよう。