ばあ様レポート。認知症の薬が効いているようで、いたって普通に見える彼女であるが、母の話によると、その薬をちゃんと飲むか見張っていないといけないらしい。いつも朝に薬を渡すのだが、受け取った薬をテーブルの上に置いたまま台所仕事を始めるなどして、なかなかすぐには飲もうとしないらしい。母に促され、やっと口に入れるとか。すんなり飲む日もあるので、その日の脳の状態によるのだろう。
昨日の朝は、今までになくぶっとんだことをしたらしい。母が薬を渡すと、「はい、ありがとう」とばあ様はお礼を言い、薬を片手に水をコップに汲み、その後薬をぽいっとゴミ箱に捨てたんだと。
「ちょっとおばあちゃん、薬飲まなきゃだめよ」と驚いた母が言うと、「飲んだよ」としれっと言ったらしい。「今、ゴミ箱に捨てじゃない」と母がゴミ箱から薬を拾って渡すと、「ええ?私が捨てたん?」とばあ様。昔からばあ様を知っている我々にしてみると、わかってやってるんじゃないのかと感じ、「とぼけてんじゃないよ」と言いたくなるのだが、これも認知症の症状の一部なのだろうか。
母の監視の下、この日もしっかり薬を飲んだおかげか、夕方、母の台所にいる私を廊下から見たばあ様は、ドア越しに元気に笑顔で手を振ってきた。知らない人が見たら、いたって普通のばあさんだと思うだろう。でも要監視。