一方的にしゃべって相手の言うことはほとんど聞いていないという人は年齢を問わずいるものではあるが、お年寄りになると耳が聞こえないとか、相手の言うことを頭でプロセスできないなどという理由でただただ自分の主張を続ける人がいるように思われる。
今日、近所の小さいスーパーマーケットの入り口を入ると、80代くらいと見られる婦人が困惑した顔で立っていた。目があったので、ニッと口角をあげた私。アメリカにいるときからの条件反射である。いちいちハイと声に出して挨拶するのが面倒なので、通りすがりの人にはニッと微笑んで去ることにしていた。ニッとした瞬間、婦人は"Anteeksi"(すみません)と話しかけてきた。いや、もうフィンランド語は習ったこともほとんど忘れてるのよ、と思ったのだが、一応立ち止まった。"appelsiini"(オレンジ)というのだけ聞き取れたのだが、話の内容はわからない。「ごめんなさい、フィンランド語がわからなくて」とフィンランド語で言ってみたが、婦人はそれを完全無視し、なにやら話し続け、果物が並べられた棚を見る。これはきっとオレンジを探しているのだなと思ったので、"appelsiini"と声に出し、私も一緒に探したが見当たらない。すると、棚の反対側にいた男性が、"appelsiini"がどうととかフィンランド語で言い、婦人は「そっちなのね」(これはわかった)とオレンジ目指して歩いていった。
その後も、別のaisleで一緒になり、私に何か聞きたそうな素振りをしていたのだが、私は目を合わせず、自分の買い物に忙しいふりをしてしまった。ごめんね、おばあちゃん。婦人は通りがかった店員に何か質問をし、希望のものを手に入れることができたようだ。
言葉ができないと人に親切もできんな。