子供の頃、アメリカのテレビ番組「奥様は魔女」が大好きであった。私の頭の中では、アメリカの家のイメージといえば広くて素敵なサマンサとダーリンの家だった。なんといっても驚いたのは、台所にまで二階へ行く階段がついていることだった。家に二つ階段があるとは、なんという豪邸だろうと感嘆した。6歳のタバサちゃんが庭でブランコに乗ったり、小さい小屋でままごとをしているのにも仰天した。おまけに魔法使えるし。夢のような生活だと思った。

アメリカでは、1964年から1972年まで放映されたらしい。そんな昔だったのかと驚く。英語がわかるようになってオリジナルを見ると、ダーリンはDarrinだったのねと納得。サマンサの洋服がおしゃれだ。

アメリカの高校時代、寮が閉まるロングウィークエンドなどのとき、学校の近くに住むアメリカ人一家でお世話になっていた。10歳の女の子がいたのだが、あるとき私が二階のバスルームでマスカラをつけていたら、「あたしもこども化粧セット持ってる」と言って、階段の横にあるドアを開けた。私はずっとそこは物置かなにかと思っていたのだが、なんとドアの向こうには階段があった。「階段が二つある家だったのかっ!」とサマンサの家を思い出してワクワクした私。せっかくの階段なのに使ってはおらず、子供のおもちゃなどが置いてあったりして、結局物置代わりだったようだ。「そこにも階段があったのね」と言うと、台所に通じていると言う。台所で朝食を食べるスペースの壁にドアがあったのは知っていたが、これもやはり物置かなにかだと思っていた。なぜに自分が「二つ目の階段」にこれほど興奮したのかわからない。秘密の階段っぽいと思ったのかね。

子供のままごと用の小屋だが、住み込みの子守をして生活費を稼ぎながら大学に通っていたメリケン友達のところに遊びに行ったときに実物を見た。お金持ちの家で、娘二人にはありとあらゆるおもちゃが与えられていた。彼女らの遊び小屋には、電気が通っていた。照明つき。夜も遊べる。すごいなと思うより、"that's ridiculous"と思ってしまった。なんというか、子供達も子供らしくないというか、お金で世の中どうにかなると思っているような感じだったし、タバサちゃんが無邪気にお茶会ごっこをしているのとは全然違ったのよね。

私はままごと用の小屋など持っていなかったが、椅子を並べてその上に毛布をかけ、懐中電灯片手に中へもぐって遊ぶのが好きだった。地味。