小学校3年のときだったと思う。夏休み明けに工作の宿題を持って学校に行ったときのこと。同じクラスのタナカ君は、自分の部屋の様子を作ってきていた。四方に壁があり、一つの壁には窓がついていた。天井はなく、上から部屋の様子を覗きこめるようになっていた。箱の中には机やベッドが配置されており、紙で作った自分の姿を椅子に座らせていた。リカちゃんが好きでこういう家のおもちゃが大好きだった私は、タナカ君の作品がよく出来ていることに感心したと共に、「タナカ君の恋人も作ってあげる」と大いに余計なことを思いつき、女の子の姿を紙で切り抜いてベッドに座らせた。他の生徒も笑ってはやしたてたところ、タナカ君は泣いてしまった。まさか泣くとは思わなかったので私はたいそう驚いた。何も泣くこたーないだろー、と思ったが、泣かしてしまって悪いなと思ったので、女の子の切り抜きは取って捨てた。未だに彼が泣いて嫌がる顔を覚えている。一生懸命作った作品に変なことをされて傷ついたのかな。ごめん、タナカ君。