この間実家に行ったとき、県外の前の家から広島の家へ帰ってきたときに詰めたダンボールで、開けていないものがいくつかあるのを発見した、と報告を受けた。引越して10年以上だが。中身を見たら私の子供の頃の本や楽譜が入っていたから、いらないものなら処分するので確認してくれ、と言われた。
もしかして、私が昔大好きだった「小さな魔法のほうき」とか「ガラス山の魔女たち」とかが入っているかもしれぬ、と喜んだ。

小さな魔法のほうき (fukkan.com)

小さな魔法のほうき (fukkan.com)

ガラス山の魔女たち (ファンシーロマン (6))

ガラス山の魔女たち (ファンシーロマン (6))

魔女もの、好きだったのよ。でもダンボールには入ってなかった。残念。まだどこかに別のダンボールがあるに違いないと見ている。代わりにもっと懐かしい本を見つけた。
イルカの夏 (岩波ものがたりの本)

イルカの夏 (岩波ものがたりの本)

このブログでも、ずっと以前、これが読みたいと書いた覚えがある。よかったー、あったのね。早速読んだ。癒された。
作者はドイツ人だが、舞台はエーゲ海の島。主人公は活発な少女アンドルーラ。海綿取りの父親は生まれる前に海で亡くなってしまい、機織や洗濯の手伝いをして生計を立てる母親と二人つましく生活している。ある日、「こじきの子とは遊ばない」と他の子供に言われ、傷つき一人海辺へ。するとしゃべるイルカが現われ、友達になる。イルカは、遠くに浮かんでいる小さな島、ヒリア島へアンドルーラを連れて行く。そこには、泉の精や、ケンタウルス、上半身は人間で下半身はヤギのパーンの4兄弟などが住んでおり、アンドルーラは夏休み中、毎日その島へ行って楽しく遊ぶ。しかし、夏休みも終わり、学校へ戻らなければならない。島のことが忘れられないアンドルーラは、学校へ行くふりをして島へ行って遊び続けた。それがお母さんにばれる。ショックを受けたお母さんは、マリア様へお祈りをしにお堂へ向かう。そこでひとり、夫を亡くしたことの悲しみ、貧しさのゆえ働きづめで、わが子をただしく導いてやれなかったつらさを嘆いて涙した。その頃、アンドルーラはまたイルカに会いに海へ行くが、そこで見知らぬおばあさんに出会う。素足のおばあさんはイルカにむかって「おまえ、この子をどうするつもりだったの?...この子は島のものではありません。...地上のもの。あたしのものなんだからね。二度ととここへこないでおくれ!」と言い、イルカはいそいそと去っていく。おばあさんは、「もう二度とここへきてはいけません。」とアンドルーラに言い、去っていく。このおばあさんは誰?素足なのに不思議なことに足がきれいなままのこのおばあさんは?怖くなったアンドルーラは急いで家に帰るが、お母さんはいない。
お堂で眠ってしまっていたお母さんは、ふと目覚めたときに心が軽くなっていることに気付く。そして、忙しさからアンドルーラに目を向けていなかった自分を反省し、自分もアンドルーラのためにもっと前向きに生きなければ、いつまでも亡き夫のことを思って悲しんでいてはだめだと、10年ぶりに喪服を脱ぐことを決心する。そこへアンドルーラが走ってやってきてしがみつく。「いいの、いいの、もう大丈夫よ」とお母さんは優しくアンドルーラを抱擁する。
アンドルーラは二度と楽園の島には行かなくなるが、控えめでおとなしい少女になってしまう。イルカや島の友達に会えない心のもやもやを解決するため、お堂にお参りに行き、心のうちをマリア様に打ち明ける。イルカに会いにいくのはやめる、「だって、あなたがいっちゃいけないっていったんですもの」とあのおばあさんがマリア様だったことに気付いているアンドルーラ。でも、イルカが会いにきたらはなしはするつもりですと告白する。
やがて求婚していた男性との再婚を決意したお母さんとともに、新天地へ向けて船で出発した朝、船のそばにあのイルカが現われる。「あなたのこと、けっしてわすれないわ!」と最後のさよならの挨拶をかわし、泳ぎさるイルカを見つめるのだった。
こんな感じの話。ギリシア神話の楽園で遊ぶ少女、マリア様に救われ、新しく人生をやり直す勇気を得るお母さん、そして娘。
何事も勇気か。欲しいわ、勇気。ううぅ。
この本のブドウの描写がおいしそうで強く印象に残っていたのだが、やはり今読んでもうっとりする。
「アンドルーラは目をつむって、なめらかなブドウのつぶが口のなかではじけ、さわやかな味が口じゅうにひろがって、あまいつめたい汁がのどへすべりこんでいくのを、たっぷり味わいました。」p46
ブドウの季節が楽しみだなあ。これを思い出して、味わって食べたい。