この間、実家でニュースを見ていたら、何かの建物が完成したとかで、お祝いに建物からお菓子を投げて人々がそれにむらがるという風景を映していた。この行事の呼び名があるとは思うが、思い出せない。私はこういう情景を一度だけ実際に見たことがある。中学2年のとき。あまりのことにかたまって動けなかった。
学校から帰る途中、新築の家の二階からその家の人がお菓子かなにか入った小さい袋を投げ、大人も子供もキャーキャー騒ぎながら地面にはいつくばり、落ちた袋をいかにたくさん拾うか競い合っているようであった。まず、一体何をしているのかということが私には理解できなかった。こういう行事を見たことも聞いたこともなかったんで。一緒にいた同級生が喜び勇んで拾いに走るのをただただ呆然と見つめるだけであった。一緒になって自分も拾うなんて「絶対いやだ」と思った。人が投げたものを楽しげに拾うイベントがあるということがショックでさえあった。「いやしい」「はしたない」と思った。その日一緒に帰っていた下級生が顔をあげて、「先輩、取らんのん?」と聞いてきたとき、彼女や同級生が楽しそうにしているのに、なんだか私だけマイナスな気持ちを持ってその情景を見ているのが悪いと感じて、でも参加することも恥ずかしくて、妙に明るく「うんうん、あたしはいいわ」と笑顔で返事したのを覚えている。
当時私が住んでいたところは、その数年前まで村と呼ばれていたようなところであったので、こういう伝統行事もよくあることだったんだと思う。もうまさにカルチャーショックであった。
で、ニュースで似たような情景が流れたとき、「これ昔見たことある。はしたないって思った」と母に言うと、「あんたがはしたないと思うのは勝手だけど、昔から行われている伝統なんだから、そんなふうに言うもんじゃない」と叱られた。まあ、確かにそうだろうと思ったんで、反論はしなかった。
その1時間後くらいに、節分の日に海苔巻を食べるというのをテレビでやっていて、芸能人が海苔巻一本を手に持って、立ったまま食べていた。それを見て母が、「んまあ、はしたない!」と言うではないか。「これこそ伝統じゃないの」とすかさず言うあたくし。I dislike inconsistency. まあ、行儀がいいとは言えないのはよくわかるけど。
そうねえ、だから伝統行事っつーんなら、それは尊重せねばならぬとはわかるが、やっぱり私自身が、災害でどこかにstrandedで水や食べ物をヘリコプターが落としてくれるっていう場合を除いて、人が上から投げたものを拾うってことはないと思うし、海苔巻一本まるまる持って立って食べることもないだろう。