Kaye2006-10-12

今日は休暇を取る、というPとレーストラックのAlastaro Circuitへ行ってきた。彼にとっては1年ぶりにレースカーを運転するらしい。彼が所有しているのではないが、彼がメンテ・運転する車である。彼の名前も車に入っている。今日はレースがあるわけではなく、練習のため。
で、あーた、このレーストラックに行くっていうのは、ほんっとうに大変なのである。休暇を取る、というからのんびりできるのかと思ったら、朝7時には家を出る、という。「えー、いつもより朝早いじゃないよ。それに行ったって、あたしは何もすることないわけでしょ」と一度はprotestしてみたものの、一緒に来てとbegされたので、まあどんな感じのものなのか見てみたい気もするし、と行くことに同意した。
結局、ぐずぐずしていたので朝8時に家を出た。まずは車を保管しているために借りているガレージへ行く。前日準備しておいた、レースカーを積んだトレーラーをワゴン車に繋げ、その他必要な工具やら部品やらなんやらをワゴン車に積み込む。重いからKayは何もしなくていい、と言うので、本当に何もしなかった。
そして3時間ドライブ。紅葉がきれいであった。

午前11時にサーキット到着。他に練習している車は一台。レースに詳しくないので良く知らないが、ラリーの車みたいな種類であった。他にサーキットで働く人たちが何か作業をしていたが、今日は利用者が少なかったようで、がらんとしていた。
さて、到着したら、車の準備をしなければならないわけである。トレーラーから降ろし、前輪を取り付け、なんかよくわからないけど色々していた・・・ようだ。お腹の空いた私は、ワゴン車の中でサンドイッチ食べてて、見てませんでした。
ふと車の外を見ると、Pがジーパンを半分脱いでいる。"What are you doing?!"と車からあわてて出る私。レース用のつなぎに着替えるわけだが、更衣室などではなく、その場で着替えるのである。"Big deal. This is Finland."と全然気にしていない。そう言えば、10数年前に日本のサーキットに仕事で一度行ったことがあるのだが、そのときもピットでパンツ一丁でうろうろしているイギリス人のレーサーのおじさんがいた。サーキットではそういうものなのか。
Pが着替えていると、少し離れたところで白いレースカーの準備をしていた男性が近づいてきて、なにやら話をしていた。Pの車の方が彼のよりスピードが出るので、お互い離れて運転しようということを言っていたらしい。
車の準備が整い、Pもつなぎに着替えたところで、私はストップウォッチとノートを持たされる。時間を計ってくれというのだ。えー、外寒いし、ワゴン車の中で本でも読もうと思ってたのに。だがまあ、せっかく3時間かけてここまで来たんだから、少しは参加してみようと同意。Pはヘルメットをかぶって車に乗り込み、ベルトをギューギューに締め付ける(「あれ、太ったみたい」という独り言を私は聞き逃さなかった)。首をサポートするパッド、手袋を渡してやり、なんかあったときのためのトランシーバーをつなぎにクリップしてやる。一度運転席に乗ると、全然身動き取れないようであった。ほそながーいところに無理やり入るわけだし。じゃ、I'll do a few lapsと言って、ぐぉんぐぉんとエンジンを鳴らしながらサーキットへ。
私は観客席へ向かい、持ってきた膝掛けで防寒し、Pがコースへ出て来るのをストップウォッチを握り締めて待つ。ウィーンウィンウィンと走っている音は聞こえるが、観客席からは見えない。しばらくすると、ラジコンで動かしているみたいにちょろちょろ走っている車が小さく見えてきて、あっと言う間に目の前に出てきた。急いでストップウォッチのスタートボタンを押す。写真も撮ろうと思っていたのだが、見えるところにに出てきた数秒後にストップウォッチを押さなければならないので、撮る暇などない。タイムは1年ぶりに運転するということで、ベストタイムよりもずいぶん遅い。あとで記録を見て"Pathetic."と首を左右に振っていた。
5ラップ走ったところで、コースを出る。その後、タイヤの温度を測って記録したり、なにやら色々紙に書き込んでいた。隣の白い車の人もものすごいエンジン音をたててコースに入り、何周か走った後戻ってきて、やはり色々紙に書き込んでいた。レーストラックにいるときは、走ってる時間より、車の状態の記録とったり、調整したりする時間の方がよっぽど長いのだ、とP。Pにしろ、白い車の人にしろ、一人でそれを全部やっている。朝早くから重い荷物を運び、車を持ってくる準備をし、何時間もかけてサーキットに来て、車を下ろしてセットアップし、ほんの5、6分走ったところで、また車の状態をチェックし、と「好きじゃなきゃ絶対できないよな」と改めて思った。後からゴーカートを持ってきた人や、別のレースカーも来たのだが、皆さん一人か、せいぜい男性二人連れである。黙々と車の準備をするのである。レースは華やかに見えるが、なんか孤独な趣味だねえ、と言うと、"Yeah, we are pretty sad."とため息をついていた。
もう10周走るというので、またタイムを計る。途中でスピンしたりして、ひー、大丈夫なのか、と思ったが、特に問題なくすぐにrecoverしていた。この後のチェックで、おそろしいことがわかった。左の前輪がいかれていたのだ。詳しいことは理解できなかったが、ボルトがどうかなったとかで、「もう少しで外れるところだった」らしい。怖いじゃないか。ボルトを締めなおせばいいと言うような単純なものではなかったらしく、その場で直す部品もないので、今日はもう運転できないと言う。夕方まで走るつもりだったのに、14時前でもう走れなくなってしまったのだ。気の毒。
とりあえず昼飯を食おう、とサーキットにあるレストランで食事。もうお昼を過ぎていたので、あるものをオーダー。豚肉をこれでもかと叩いてのばしてパン粉をつけて揚げたものとフライドポテト。ものすごいボリュームである。これにサラダとコーヒーがついていた。ポテトを全部食べることは到底無理だと初めからわかっていたし、豚肉も無理だろうと思っていたのだが、体が冷えていたからか、Pも驚くくらいバクバクと豚肉をたいらげてしまった。
 肉の下にもポテトがテンコ盛りであった。
食後、下ろした車をまたトレーラーに積み、片付けを1時間以上かけて行う。私はワゴン車の助手席に座って、働くPを傍目に爪の手入れなどしたりして、いやー、我ながらobnoxiousだと思った。爪研いだ後はちょっと手伝ったけどさ。やっと帰る準備が整い、16時過ぎにサーキットを出る。少ししか走れなかったPは可哀想であったが、「でも、Kayにはこれくらいの時間がちょうどよかっただろう」と図星なことを言っていた。別にサーキットに行くのがすごくいやなわけでもないが、時間をうまく過ごさないと、たいくつー、と感じてしまうだろう。でも、it wasn't so badである。ドライブ中はきれいな紅葉が見られたし。が、帰宅後、週末に車輪を直して、来週また行きたい、と言ったときは、「へえ」としか返事しなかったが。We'll see.