もう、まったくもってそのとおりよ、という記事を朝日新聞で見つけた。「ディッシュウォッシャー考」というアメリカにおけるディッシュウォッシャーの使用について、片瀬ケイさんという在米の方が書いている話。
私も片瀬さん同様、アメリカに行って初めてディッシュウォッシャーを見た。高校の寮が閉まる休暇中などには、ホストファミリーの家にいくのだが、その一軒家で見て、なんと大きいものよ、と思った。おまけに、ディッシュウォッシャーが一杯になるまで、汚いままの皿を数日放置するというのもカルチャーショックであった。超キレイ好きの祖母が聞いたら卒倒するような習慣である。
片瀬さんの経験とは違い、私が大学時代に住んだアパート・家には、ディッシュウォッシャーがついていないところもあった。別にそれを不便だと思ったこともない。そうまめに家で食事を作るわけでもない私には必要なかった。たまに作ったって、日本と違ってお茶碗やおかずごとにお皿が違うわけでもなく、大きいお皿1枚に飲み物のコップっていうだけが大半だし、2分もあれば洗える(洗わず溜まっている場合もあったりしたけどさっ)。
ディッシュウォッシャーと聞くと、いまだにかすかな不快感を持って思い出すことがある。帰国して働き始め、一緒にお昼を食べた人が電器店に用事があるというのでついて行ったときのこと。当時、私の実家にはディッシュウォッシャーはなかったし、無論私の1DKのせまいアパートにもなかった。その店で食洗機というものを日本で初めて見て、「日本もディッシュウォッシャーが普及してきてるんだね」と言った。既婚で子供が一人いる彼女は、「うちも持ってるけど、便利なのよ」と言い、家族がいればそうだろうなあ、と思った。でも卓上サイズというのか、日本のものはやたら可愛くて小さい。「これじゃすぐ一杯になっちゃうね。しょっちゅう回さなきゃなんない」と私が言うと、彼女はあきれたように私を見て「毎食後に使うもんでしょ」と言い捨てて、用事を済ませに行ってしまった。私は「ええっ、毎食後?!」と本気で驚いて反応したのだが、そのときは食洗機の前に私はひとり取り残されていた状態であった。私の頭では、ディッシュウォッシャーというのは一杯になるまで回さない、すなわち、せいぜい回すのは一日一回、とインプットされている。そういう経験しかないから。さすが、キレイ好きな日本人は毎食後に使うのか、と感心したのと、よっぽど大家族でない限り、アメリカじゃ毎食後なんて使わない、という説明ができなかったので消化不良でもやもやした。でも、食洗機が小さくて、3人家族で本当に毎食後に一杯になるくらい洗い物があるのなら使うしかないが、本当に皆さん毎食後使ってるのかなあ、というのはいまだに疑問。水道代も電気代もかかるではないか。作りつけのものではなくて、卓上サイズのものならそうなるのかな。
実家を建て直したとき、「ディッシュウォッシャーが絶対便利だから」と叔母に言われ、母は台所に作りつけのものを入れた。それにしたって、アメリカサイズよりはスリムである。だが、結局、人を呼んだとき以外は使わないようである。すなわち、年に数回あるかないか。初めは、汚れ物を溜めておいて、夜寝る前にスイッチを入れて、朝になったらきれいになったお皿を片付ける、ということを少しはやっていたらしい。だが、結局、うるさい、夏は暑い、たかが二人分など手で洗ったほうがよっぽど早い、というので今は単に場所をとられているだけで、「ここに引き出しがあったら便利なのに」と言っている。
片瀬さんの言うとおり、食器の数が少ないと、「きれいなお皿が残っていない」という不便な状態にすぐ陥る。で、これこそがこの話を[Finland]に入れた理由である。フィンランドも当然のようにディッシュウォッシャーを使う国らしい。Pのアパートにもある。今のアパートに引っ越したとき、まずはsilverwareのセット、大皿、小皿、スープボウル類、グラス各種を彼はそろえた。それぞれ、4本・4枚・4個セットである。料理のときにちょっと味見をするために使ったスプーン、ジャガイモのゆで具合を見るためにつきさしたフォーク、おたまを置いた小皿もディッシュウォッシャーに入れたがるPなわけであるから、これでは、まさに毎食後ディッシュウォッシャーを回さないと、使えるsilverwareもお皿もすぐになくなってしまう。片瀬さんの記事にあるアメリカ人のように、Pもディッシュウォッシャーは熱湯、熱風で洗浄・乾燥させるから殺菌ができていいと言い、dishwasher safeでないもの以外はすべて入れたがる。かといって、中ががら空きなのに回すのはやはり電気と水の無駄、という考えはPにもある。で、Pは何をしたかと言うと、もう1セットずつ同じお皿類、グラス類、silverwareを買ってきたのだ。私にしてみれば、「すんごい無駄」である。引き出しはsilverwareがじゃらじゃらとある。各皿も8枚ずつ。朝ごはんを食べにMちゃんは来るが、基本は一人暮らしというのに。そこまでしてディッシュウォッシャーを使いたいか、と思うのだが、使いたいんだろう。まあ、確かに超多忙な人間ではあるので、皿洗いをしなくていいのならしたくないというのは理解はできるんだが、山ほどまた皿だのグラスだのを買ってきたときは目が点になった。
私がfrustrationを感じるのは、まな板。Pはプラスティックのものを2枚持っている。台所に備え付けの引き出しタイプの木製まな板もあるのだが(こういうのはアメリカにもあった)、前の住人も使っていたような、ささくれだった表面のまな板なんて気持ち悪くて死んでも使いたくない。ここはPも同感で、「いずれ新しいものととりかえる、かも」と言ってはいるが、今のところ放置している。で、このプラスティックのまな板であるが、私はこれこそ使用後すぐに洗いたいのである。だが、熱湯、熱風での殺菌にこだわるPは、絶対、without failにディッシュウォッシャーに入れる。例えば、朝食用に果物を朝切り、そのまな板をディッシュウォッシャーへ。週末であれば、お昼は家で食べるので、昼食準備用にもう一枚のまな板を使う。それをディッシュウォッシャーへ。となると、もう晩御飯用にはまな板がないわけである。だが、まな板を補充するということはなぜかPはしない。じゃ、あたしが買えばいいんだが、「そんなの無駄」という考えがやはり強くて、結局ディッシュウォッシャーから出してごしごし洗って使う、ということをするわけである。
「まな板とかを殺菌するスプレーは売ってないの」と聞いたが、そんな強い薬品を調理するものに使いたくないし、フィンランドにあるかどうかも知らない、とPは言う。ディッシュウォッシャーの洗剤は強くないわけ、と言うと、確かに強いのだが、あれはedibleだと言うのだ。本当か。薬品ではなくて、酵素で落とすとか日本のテレビショッピングでやっているようなものなら納得して使うのか。別にあたしは安売りのハイターでも全然気にしないけどね。
スポンジが汚れないように脂のついていないものを先に洗うだの、洗剤を流すときも水を節約するために、溜めたきれいな水に一度いれておくだの、いかに水を節約しながら皿洗いをするかを学んだ私には、ディッシュウォッシャーって、「色んな意味で豊かな国の機械よねえ」とつくづく思うわけよ。