言葉の違う国の学校に通ったことのある人なら誰しも経験があると思うが、言葉がわからないゆえに「無知」と思われることがある。高校留学1年目のとき、Western Civilizationのクラスで、「で、ダンテだけど、何を書いたんだっけ?」と先生が言い、生徒がくちぐちに「Divine Comedy!」と発言するのをだまって聞きながら、「神曲だよ、神曲、このっ」と思ったのを覚えている。答えを知らないわけではないのに英語で言えないそのもどかしさ。
英語での発音が、日本語のそれと異なるためにわからなかった、という経験もある。3年のときに取った美術史のクラスで、「ヴァンゴーはみんな好きか」と先生が聞くのだが、何のことかよくわからなくて、「その人は知らない」と私は答えた。え、知らないの、というクラスの空気を感じ、なんだか居心地が悪い。後で調べようと思い、「vango?」などとノートにとりあえず書いていたら、先生がゴッホの絵のスライドを写した。「おー、ゴッホ!」と思わず声に出して言ったわよ。ゴッホも知らない無知な東洋人、なんて思われちゃたまらん。「ああ、ファン・ホッホのこと」って冷たく言ったらよかったか。って、そんな読み方知らなかったけど。
一番困ったし、今も困るのが中国の固有名詞。英語では中国読みをするので、本当にわからない。Tang Dynastyくらいなら、話のcontextから唐だなと気付いたりもするし、マオなら「ああ、毛をこういうのか」ともわかった。だが、「Chiang Kaishek」と突然言われて、わからなかったことがある(蒋介石)。逆に、訒小平は、「Deng Xiaoping」の方がすぐにわかる。アメリカのニュースで何度も聞いたので、「とうしょうへい」と言われると逆に一瞬、それは誰、と考えねばならない。
今は、普段の生活で、中国の地名や人名を英語で聞いたり使ったりという機会はまずない。胡錦濤もなんと発音するのか知らない(ので、今調べた。Hu Jintaoだと)。だが、この間Pが、ShenzhenとTianjinとWuhanに出張だと言い、一体それはどこかさっぱりわからん、というので調べてみた。深セン、天津、武漢らしい。ティアンジン甘栗。
で、今朝、そのティアンジンにいるPからの電話でたたき起こされた。「朝ごはんを今食べている。ミーファンもある」というので、「なにそれ」と言うと、「え、知らないの?riceのこと」と本気で驚いたように言う。知らんわ。「今度の中国出張では、休暇を取ってチェンデュに行こうかと思っている」と続けるP。「Where's that?」と言うと、「え!有名だろう。シチュアンプロヴィンスにあるんだよ」とほざくので、「中国の発音で言われてもわからない。日本じゃ、中国の地名はほとんど全部日本語読みって言ったでしょうよっ」と、朝から不機嫌になる。怒らせたと気付いたPは、小さい声で「ミーファン means rice」と話をそらそうとする。
起きてから辞書で調べたが、「四川省成都」で休暇を取りたいらしい。今週末にはGreat Wallにクライアントが連れて行ってくれるとか。万里の長城。Wanli Changchengはどうだった?って聞いたろ(今調べた)。