日本の知恵

日本の湿った夏には、竹のスリッパが最高である。以前は夏場にスリッパを履くという習慣がなく、裸足で歩き回っていた。いつからだったか、台所で裸足でいるのがなんだか嫌になって、竹のスリッパを買ってみたら、えらくサラサラしているので気に入り、それ以来夏場は竹のスリッパと決めている。
去年の夏、それまで履いていたものが哀れな姿になったので捨てた。私はスリッパに高い代金を払うことに極めて強い抵抗を感じる。捨てたスリッパもセールで198円であった。3回の夏をそれで過ごすことができた。安ければ何でも買うというわけではなく、柄や色が私の許容範囲内のものでなくてはならない。下品な色や、キャラクターがついたものなどを我が家に持ち込むことは許さない。
気温が上がってきた頃から、ホームセンターやスーパーなどのスリッパコーナーをチェックしてはいたが、竹や畳のスリッパは、安くて780円であった。スリッパ一足に780円も払うのは死んでもいやだ。おまけにろくな柄ではない。結局ずっと買えずにいて、6月もほぼ終わり。既に十分暑い。布製のスリッパを履いていると汗をかいて不快である。
今日こそは198円じゃなくても買おう、と中心部の大型スーパーに出かけた。500円までなら出しても良い気分になっていた。スリッパコーナーを見ると、竹製のものがずらりと並んでいる。セールで399円。色も柄も悪くない。くすんだ色の無地もあれば、マルチカラーの細かいストライプもある。十分許容範囲内。おお、これで足元さらさらの日々を送ることが出来る、と2足購入。
帰宅して、布製スリッパから竹製に履き替えたとき、あまりの涼しさに「ほー」っと声が出た。湿気の多い日本の夏には、やはり竹だとかイグサだとか、昔から使われている素材を取り入れるのが正解だと改めて思った。
夏場は、東と西向きの部屋があまりにも暑くなるので、それぞれのベランダにawningを取り付けたいのだが、賃貸ゆえにネジなどが必要なものは使いたくない。となると、なんだ、あれ。スダチじゃなくて、すだれか。よしず?たてず?ああいうのを窓に立てかける以外に方法はないのかもしれないが、はっきり言って、あれはあまり格好の良いものではないと思う。効果があるのはわかるし、日本の古くからの知恵だと思う。でも日本家屋で使っているのならまだ違和感はないかもしれないが、コンクリートの建物にはなんだかなあ、と常々感じている。それに冬になって片付ける場所もないし、外に置きっぱなしでは朽ちそうだし。痛んだときに捨てるにしても、かなり大きいものだから粗大ゴミ扱いになると有料だし、と、この2年間は暑いまま過ごした。

とぐずぐず思いながら検索してみたら、洋風たてずなるものがあることを知った。だがこの色合いは勇気いるなあ。もっといいのがないか探してみよう。