本当にいた、どのメーカーのパンティライナーが一枚につき一番安いかを薬局の店頭で計算しながら相談している女二人組。
「えっとー、これは298円で45枚入りだからぁ」「こっちの方が安いんじゃない、60枚入りだしぃ」「あ、そっかそっか」(唇をとがらせ、人差し指を口元にあてながら頷く、わざとらしい理解のジェスチャー
30歳前後。もしかするともっと若いのかもしれないが、若い人が持つ自然な華やかさゼロ。制服のように二人とも黒のタートルネック。おしゃれのためというより、無難だから着ているという風体。例えて言うなら、タンスの裏の綿ぼこり、という雰囲気をかもしだしているこの二人。
計算がなかなか済まず、「でもぉ、こっちはコットンだしぃ」と、商品棚の前につったったまま動こうとしない。私ともう一人の客が後ろで「邪魔なんだよ」という表情で、でもじっと我慢して待っているのだが、全然気づいていない。そこで私が声をかける。これ以上低くならないような抑えた声で、「ちょっとよろしいですか。商品取りたいんですが」と言う。「あ」とホコリ1も2も振り向くが、反射的に動くということはしない。愚図。すると、もう一人の客が後ろから商品に手を伸ばし、カゴに投げ入れてスタスタと立ち去る。あなたのイライラはよーく理解できる、と私は彼女に連帯感を感じる。するとホコリ1と2が顔をあわせ、「ぷっ」と噴出して笑うではないか。パンティライナーの一枚の値段をぐだぐだと計算しているあんたらの方がよっぽど嗤いの対象だってのに気づきなさい。

棚の前から動かずにクスクス笑っているだけなので、私はため息をつきながら二人の間から手をのばして目的の商品をカゴに入れ、とっとと立ち去った。結局どの商品をお買い上げになったのかは知らない。閉店まで計算してろ。