粗品

明治安田生命が調べた去年生まれた子供の名前で、一番多かったのは男が「蓮(れん)」、女が「さくら」と「美咲(みさき)」だそうな。ふうん。いい名前じゃん。

12年くらい前、知り合いがこれから生まれる子供の名前を考えているとき、「子供の頃、すみれちゃんとか、花の名前が可愛くてうらやましかったなあ」と言うと(サリーちゃんの影響なんだが)、花は枯れるからだめだ、と彼女は言った。はー。じゃ、岩とか石とかなら枯れもしなきゃ、くさりもしないしいいんじゃない、と思ったが、だまっていた。なんかこう、こういう縁起じゃないけど、そういうものを気にするというか、後から否定的な意味をわざわざくっつけてマイナスなものにしてしまう発想を私は好まない。結局生まれたのは男の子で、名前は何にしたんだったっけなあ。忘れた。親しい人じゃなかったし。

Kayという名の私がこんなことを言うのもなんだが、西洋の名前に無理やり漢字を当てた名前が好きではない。飛ぶ夢と書いてトムという、どうみても日本人のガキを知っていたが、はやらない場末のスナックのようだと思った。

まあ、人のことはどうでもいいのだが、私自身、ケイという名は気に入っている。日本じゃユニセックスだし、たいていの国の人に簡単に覚えてもらえるから。ただ、one syllableじゃない名前にあこがれるところも大いにある。「さくらこ」とか。

アメリカに行ったばかりのときは、"OK"の"K"を特に強く発音する場合、呼ばれたかと思って振り向くことが多かった。高校の3年間、"Okay, Kay. Oh, that's cute."というのを100万回は聞いたと思う。Kayはキャサリンの愛称なので、勘違いしていつのまにか私を"Kate"とか、"Katie"と呼ぶ人もいた(キャサリンの別の愛称)。面倒なのでそのままにしておいたこともある。

同名の女性には、キャサリンだけどKayを使っている女性にアメリカで一人会った。日本ではテレビで見ることはあっても、実際には出会ったことがない。男性は、漢字は色々違えど、これまで数人の日本人に会ったことがある。おお、同じ名前ですねえ、と一応話のタネにはなる。

そういえば、うちの母親のメリケン友達や親戚は、彼女をKathyと呼ぶ。キャサリンがクリスチャンネームなんだと思う。Katharine? Katherineかな。Kathleen? Gotta ask her. でも、だから私がケイになったわけではないと思う。だったらそう聞いているはずだ。そんなことまで考えるような人ではない、彼女は。ん、なんとなく、くらいに違いないわい。

私は男だったら、「がん」が候補にあがっていたらしい。一応女でよかったと言っておく。

画像のキッチンばさみは、なんと近くのスーパーの開店挨拶の粗品なのだ。郵便受けにチラシと一緒に箱が入っていて、「またしょうもないプラスチックのトレイかなんかじゃないの。ゴミになるっつーの」と思って開けたらこれだったので、"what?!"と声に出してしまった。これ、近所中にくばってるわけじゃないだろう、まさか。あたし、選ばれた人?

夜:
実家に楽譜を取りに行ったついでに、母がなぜKathyなのか聞いてみた。クリスチャンネームではなかった。彼女の教会にそういうのはないらしい。「英文科のとき日系アメリカ人のクラスメートもいて、みんなでニックネームをつけあっこしてKathyになった。カズコでKazzyって呼ばれている日系人もいて、あたしもカズコでそれに似た感じで。」

それだけの話かい。「Katharineなわけ?」「ただのKathy.」じゃ、キャサリンだからあたしがKayになったってことじゃないのね、と聞くと、「ううん、そんな面倒な話じゃない」と言われた。やっぱりね。