車の「ウィンカー」という言葉を見ると、大学時代のある出来事を思い出す。「あたしは言うよ」が口癖の"I am right no matter what"的な性格で、development of social skillsが著しく遅れている三十路に近い院生の女が知り合いにいた。悪人というわけではないのだが、とにもかくにも疲れるので長い時間を一緒に過ごすことは避けていたのだが、ある日不幸にもバスで一緒になってしまった。当たり障りのないことを話していると、どういう成り行きだったか忘れたが、ある英語のジョークを教えてくれると言う。Blonde jokesと呼ばれる、金髪=頭が足りないという偏見をベースにしたジョークがアメリカには山ほどあるのだが(民族、見た目など、ある特定の種類の人間をネタにして嗤うジョークが英語には多々ある。悪趣味だし感じ悪い。だがこれだけ数があり、中には笑えてしまうのもあるというのは、人はみなstereotypeを基にした何らかの偏見を持っているからだろう)、そのひとつに結構有名な以下のようなものがある。

Q: What does a blonde say when asked if her blinker light is on?
A: It's on. It's off. It's on. It's off. It's on. It's off...

苦笑程度で、特に笑える冗談ではない。で、彼女はこのQの部分を言うときに「blinker」を「blinkler」と言ってしまったわけである。ああ、blinkerと言いたいのだなと思い、既にオチも知っているジョークだったのだが、この女に間違いを指摘すると、大変な思いをすることが過去の経験からわかっていたため、それはlet it passし、中途半端な笑みを顔にはりつかせて内心「困ったなあ」と思っていたら、彼女は私がジョークのオチを理解できなかったと勘違いし、「ウィンカーがついてる、ついてない、って言ったってことだよ!」とsnapし、呆れ顔でため息をついたのだった。「ああ、なるほど」と答えた私は間違っていただろうか。彼女のためにも、ちゃんとblinklerなどというものはこの世には存在せず、blinkerなのだと教えてあげるべきだったのだろうか。私は人間として取り返しのつかない罪を犯してしまったのだろうか。

なんて、全然思ってないが。

Get your jokes straight before you tell them.