おいしゅうございました

目覚ましがなった後もベッドでぐずぐずしていたら、玄関チャイムが鳴る。まだ8時前。今日は宅配がくる予定なのだが、10時以降と指定しているはず。もー、なんなのよ、と思うが目はつむったまま。しかし、チャイムは鳴り止まない。うちのチャイムは一度押すと2回鳴る。10回は鳴ったところで悪態をつきながらノソノソと起きだし、不機嫌丸出しの低音で「はい」とインターフォンを取る。「あ、下の○○ですー」と明るい大家さんの声。まじか。「あら、ごめんなさい。お待ちください」といきなり声のトーンもあがり、即行フリースをはおってパジャマを隠し、下はとりあえずsweat pantsに歩きながら履き替える。髪をくくりなおし、「あーうーあーうー」と声を出さずに顔の運動をし、いざ、笑顔でドアを開ける。

私のずんずるげのいでたちにひるむ様子もなく、「夜なかなか会えないからね、これ今作ったんだけど、少しだけどどうぞ。」といきなり暖かいお赤飯の入ったパックを渡す笑顔の大家さん。えー、嬉しい、でもこんな時間に。「好きかどうかわからないけど」「大好きですー」と異様に大声で返事する私。まだ脳みそが起きていないため、細かい体の制御が利かない。「じゃ」とまた笑顔で階段を下りていく大家さん。「いつもすみません、ありがとうございましたー。」と貼り付けた笑顔はそのまま頭を下げる。

こういうものを手作りするような家に育っていない私にとって、栗もゴロゴロ入っている桃色のご飯が珍しくてしょうがない。すごいなあ、大家さん。仕事に行く前に赤飯炊くなんて。普段、朝ごはんはヨーグルトとパンにミルクティーくらいというのに、せっかくあったかいし、と早速いただいてしまった。2膳も。大変おいしゅうございました。

お、そういえば、今日はうちの両親の結婚記念日ではないか。一人で赤飯でお祝いしちゃったよ。

ちなみに「ずんずるげ」は広島弁ではなく、見苦しい格好を表す、うちの造語である。