クリスマスは祝わないが、クリスマスソングは好きである。祝っていた子供の頃からの思い出もあるのだと思う。今かけているのは10数年前に買ったこれ。

Jazz to the World

Jazz to the World

アメリカで学生をやっているときのクリスマスの思い出と言うと、ライトアップがきれい、休暇で勉強から解放されるなどポジティブな物もあるが、なんとなく寂しいという気分になっていたことも否めない。アメリカの親戚の家に行ったり、日本に帰ったこともあったので、一人で過ごしていたわけではないのだが、なんだかセンチメンタルな気分にさせる雰囲気がある。

一度、大学3年のときに一人で過ごしたことがある。メリケンの友達のヴィッキーちゃんが実家に誘ってくれたのだが、11月の感謝祭の休暇に泊まりにいかせてもらったとき、彼女のお母さんと一緒に住んでいる彼氏が二度と会いたくないと思うほど苦手で苦手で、断ったのである。内心、「お母さんにはもっとふさわしい男性がいるはずです〜」と思ってしまったくらいだった。口を開けば自慢話、知ったかぶりで、インテリぶっているのだが、定職は無いという男だった。

本当の理由を言って断るわけにもいかないので、「クリスチャンじゃないし、ただ一人でのんびり何もせずに過ごしたい」と伝えた記憶がある。彼女にとってもクリスマスは宗教的なイベントではなかったのだが、「ホリデイシーズンを一人でなんてダメよ」と簡単に理解してくれるはずもなく、結構必死で「一人で大丈夫なんだってば」と説得した。

彼女が実家に車で帰る前に私のアパートに寄ってくれ、「あんまり考え込んじゃだめよ」と言われた。別に考え込むようなことは何もなかったのだが、一人でいたいというのを彼女は何か私が悩んでいたと解釈していたようだ。余計な心配をさせてすまない。

一人だったから特に寂しかったという思い出はないのだが、正直、退屈ではあった。住んでいたアパートも皆さん留守でひっそり静かだったし。

年が明けてヴィッキーが帰宅したと電話をくれた。とても怒っていた。どうしたのか聞くと、もうママの彼氏に腹が立って、とああだったこうだったと不満をぶちまけていた。内容は忘れた。私は、「お母さんの彼氏だし悪く言いたくないからだまっていたけど、実は私も感謝祭のときにイヤだなと思ったことがある」と控えめに彼女の言い分に同意した。「彼の悪口ならどんどん言ってちょうだい!」と嬉しげなヴィッキー。まあ、ここでまったく正直に本音を言うとやはりよくないと思い(「プライドと自己評価は高いけど、実際は自信がないから自分を実際より大きく見せようとつまらない自慢話ばっかりする中身の無いルーザー」とか言いにくいし)、一つだけ、困ったエピソードを話した。私のカメラで写真を撮ってもらう時、私が「シャッターを半押ししてピントを合わせてから、下まで押す」と説明しているというのに、「I used to be a photographerだから、写真の撮り方はわかっている」と本当かどうかわからないことを言い、「写真とはこう撮るものだ」と連写しようとするのだ。連写ができるようなカメラではないというのに。結局、何も撮れてなかった。「そう、人の話を一切聞かない男なのよ!」とヴィッキーも大盛り上がりであった。
その後、お母さんとどうなっただろうか。