昔のことをよく覚えている(ような気になっている)というのは、何度もそれらの出来事を振り返って復習しているからだろうが、亡くなったM先生の言ったあれやこれやが突然頭にバンッと浮かんできて困っている。別に困らなくてもいいのだが、哀しいし。
特別なセリフでもなく、生徒の誰かが彼に何かをしていいかと許可を求め、彼が"I don't see why not."と微笑みながら言ったとか、日々の何でもないシーンが思い浮かぶのである。あのとき私は別の先生の教室のドア近くに立っていて、先生は廊下を歩いていて教室の前を通り過ぎようとしたところをその生徒に話しかけられて立ち止まったのだった。白いシャツを着ていた。
3年のときの3学期は、私は彼の教室で彼と二人でランチを食べていた。一度、私のクラスのミーティングがランチタイムにあったので、今日は一緒に食べられないからね、と言いに行ったら、"Thanks a lot."と腹を立てたふりをして笑ったとか。
で、まあ、何が悲しいって、大学時代に彼と連絡を取らなくなってから、彼がどういう生活を送っていたか全然知らなかったわけで、メモリアルサイトを見ても、「I don't know this person.」という気持ちになってしまうわけである。彼の晩年を知っていた人たちがうらやましいのである。友達や同僚がアップロードした楽しげなパーティーの写真や、ドラムを叩いている彼の写真を見て、「むかーしむかし、彼は私のことを気にかけてくれる友達だったが、この写真に写っている人は、私のことなど忘れてしまっている」と思って寂しいのである。勝手なんだけどさ。

大学でのアパートがなかなか決まらず、知り合いも全然いなくて気弱になっていた夜、公衆電話から彼に電話をしたことがあった。コレクトコールだよ。なんの躊躇もなく、受けてくれた。

寛容で暖かい人だった。