数週間前、ばあ様が一人で浴室から自室へ戻るときにすっころび、頭にタンコブを作った。タンコブがしばらく痛かったらしいのだが、ころんだことはまったく記憶になく、どこかで打ったと言い続けていた。

浴室から戻るときに、脱いだ服やタオルなどの荷物が多くなって両手がふさがるのが危ないと思い、そういう物を入れる大きな袋を渡した。フィンランドで買ったマリメッコのウニッコ柄の大きな綿のバッグである。
「んまあ、目立つ柄。外国のものでしょ」と目を丸くする。用途を説明するも、「大丈夫よ」と笑って取り合わない。
「忘れたかもしれんけど、この間ころんで頭打ったでしょ」と言うと、首をふりながら答える。「違うよ。あれは、立ち上がったときに天井で頭を打ったんよ」
どんだけ長身。

なんでもいいけど、とにかく両手がふさがるのは危ないから使ってみて、と言い、脱いだものを私がバッグに入れてばあ様の肩にかけた。

部屋に戻り、そのバッグを床に置いたら、「それ何?」ともう忘れていた。早いわー。
毎日の習慣にすれば、新しいことでも覚えることがあるので、期待したい。