実家の風呂からあがってしばらく居間で新聞を読み、そろそろ濡れた髪を乾かしたいと思ったものの、母が風呂に入っているので洗面所に行くのもお邪魔だわね、と居間のファンヒーターで乾かすことにした。
床に正座して体を折って送風口に頭を近づけ、ファンヒーターに激しく許しを請う姿勢である。後頭部も乾かしたいと、さらに体を丸めて頭頂部を床につける。
ふと視線を感じて頭をあげると、どう声をかけていいかわからない顔をして母が立っていた。「せっかくの温風だから電気代の節約にもなろうかと」と言うと、「そう。おやすみ」と出て行った。
私のような人間は、エレガントに暮らすというのは無理だな。