アメリカの高校の世界史の授業で、国情がわやわやのルワンダをどうにかするという、ロールプレイングのプロジェクトがあった。クラスには15、6人の生徒がいたと思うが、それぞれルワンダの代表、アメリカの代表、ニュース番組のレポーターなどの役割が与えられ、問題を解決していくというものであった。私は国連役を仰せつかったが、一体全体何をどうすりゃあいいのだと途方にくれた。
何をどうしたら何が解決するのかわけもわからないまま、ルワンダの要求を聞き、アメリカと話をし、それぞれの役の子達の間をかけずりまわった、という思い出しかない。でも97点もらったのはよく覚えているので(驚いたんで)、なんか一応の任務は全うできていたんだろうとは思う。
なんでこんなことを思い出したかというと、昨夜、双方の話を聞いて仲介をするというイベントがあったのである。
親子喧嘩である。
13歳になったMちゃんは何かと人生が大変そうである。思春期である。敏感なのである。難しいのである。Pはといえば、いいやつには違いないのだが、相手の感情を理解して共感しつつ話をするということは得意としない。Pにとっては、Mちゃんが一体何に傷ついて怒っているのかが理解できないのである。
Mちゃんはかなり動揺しており、ぽろぽろと涙をこぼして、大変なのである。スウェーデン語でお父さんと話がしたかったら、あたしのことは気にしないでいいよ、と伝えたのだが、彼女は首を横に振り、何語で話したって、パパは私を理解しないから関係ない、と泣くのである。笑ってはいけない。Mちゃんは嗚咽をあげながら、一生懸命何が不満なのかを説明する。まあ、結局のところ、Pだけのことではなく、ちょっとした挫折をし、それが悔しいのと悲しいのと、そこへPが(事実なんだが今言わなくてもいい)余計なことを言ったらしく、傷ついて涙が出るのである。
私はMちゃんの話を聞き、Pに事実関係の確認をし、Mちゃんはこう思っていたのに、Pはこう解釈したわけだね、と状況をまとめ、お互い誤解もあるようだから正すようにと促し、涙を流すMちゃんの目元を見ながら、ビューラーもしないのにこんなにクルンときれいに睫毛がカールしているなんてうらやましい限りだなどと考えていた。
泣いて思いのたけをぶつけたら一応のところは気が済んだらしい。ここでアイスクリームを皆で食べれば気分転換にもなるのであるが、Mちゃんは食べるものへのこだわりがさらにすすんでおり、アイスもチョコレートもおやつも一切食べず、以前よりも口にするものが限られているのである。「ハンバーガーとポテトとシェークで、嫌なことも忘れちゃおう」というわけにはいかんのだ。動物愛護以外のどういうコンセプトでここまでストイックに食べ物の制限をするのかはよく知らない。健康にもいいんだから悪いんだかよくわからんが、親が許可しているのなら、私は何も言わない。その代わり、彼女の食事の用意はかなり大変なので、Pにまかせている。
いずれ、「昨日彼氏と喧嘩して、あんまりイライラしたから、有機栽培のレタス一個まるごと食べちゃったわ」とか言うんだろうか。
甘いものというのは、気持ちをほっとさせるところがあるので、これが使えないというのは仲介役としては残念である。砂糖ならいいのかな。精製されてるからダメとか言うのかな。サトウキビなら大丈夫そうだな。「まあまあ、サトウキビでも噛んで落ち着きなよ」ってか。
あたしも色々大変なのよ。