実家にて。
祖母の部屋の戸が開いていたので、前を通ったとき何気なく中を見たら、食卓の椅子の上にあがって箪笥の上を拭いていた。「ちょっと〜、危ないよ」と言うと、「え?上がもうホコリだらけ」と無視して拭き続ける。たぶん、私が何を言ったか聞こえていない。まあ、基本は自己責任。97になるというのに椅子の上に上がる運動能力があるというのもすごいことだ。
しかし、忘れっぽさ、思い込みの強さは確実に進んでいる。近所にポストがあるのだが、もう少し先にあるコンビニの前にもポストがあると言い張る。「前からあるポストは丸くて、新しいのは四角い。絶対確かよ。この間、新しいポストに手紙を落としに行ったんよ」と自信満々で断言する。実際には、コンビニの前にはポストはないし、以前からあるポストは四角い。大体、丸いポストなんて最近ないし。
で、このポストの話を5回くらい繰り返す。否定すると面倒なので、「ふーん」としか反応しないことにしている。
97でさっさと自分で手紙を書いてポストに投函しに行くというのもすごいことだ。しかし、ばあ様は同じ人に同じ内容の手紙を続けて出す。伯母からも「同じような手紙が3回来た」と聞いたことがある。
ポストの件のほかに最近しつこく繰り返すのが、サラダオイルの話である。数週間前、ばあ様はオイルがなくなったと言って母のキッチンに来たらしい。母は、お中元でもらったのがあるから、一本あげるよ、と言って渡し、ばあ様はいつもどおり遠慮しまくり、お礼をいいまくって持って帰ったとか(昔からものすごい遠慮しぃ)。その後、私が母といるときに、「この間借りた油を返しに来た」と1センチほど減っている油の容器を持ってきた。「あげたんだから返さなくてもいいの」と母が言っても、「いやいや、この間自分で買ったから」と譲らず、結局返してもらった。ザ・リチギ。

が、それ以来、自分で買ったサラダオイルを持ってきては、「この間借りたのをまだ返しとらんかったね。もう長い間借りっぱなしで」と言っている。私も何度か目撃した。「それはおばあちゃんが買った油よ」と言うと、ものすごく驚いた顔をして、「ええええ?そうじゃった?」と反応する。言うだけでは絶対また忘れるので、私は油性ペンで容器に彼女の名前を書いた。
これでもうこの件は終わりだろうと思ったら、今日母が、「油に名前書いたんでしょ」と私に聞く。昼間、「もう長い間借りっぱなしで」とまた持ってきたらしい。名前を一つ書いたのでは足りなかったか。読みが甘かったな、私も。

まあ、いずれオイルを借りたことも忘れるのでは、とは思うんだけど。