アメリカで学生をやっているとき、驚愕したことがある。大学1年のとき、友人の家で行われたパーティーメリケンの女友達と一緒に出かけた。大学生のパーティーにありがちな、樽ビールを持ち込み、私から見れば、「ただただ酔っ払って大声出して騒ぐだけ」のもっとも苦手とする(=大嫌いな)タイプの集まりだったのだが、一応アメリカの大学生のようなこともしてみねば、と行ってみたのだった。
こんな前置きはどうでもいいのだが、何に驚愕したかというと、この女友達の排尿に対するオープンさである。彼女は気の合う男性を見つけたらしく、その彼について私と話がしたいからと言って、私をバスルームに招き入れた。私はただ単に二人で話せるスペースがたまたまバスルームだったと解釈したのだが、彼女は彼のことを話しながら、いきなりトイレに座るではないか。What are you doing?!!と私は叫んですぐに後ろを向いたのが、"What's the big deal?"と彼女は全然気にしていなかった。私の目の前でこの人は用を足している、という光景を目の当たりにし、世界って広いんだわ、と感動した。嘘。
数年後、NYに遊びに行ったとき、当時NYに住んでいた従弟とその彼女(メリケン)とバーに行った。その彼女とは初対面である。日本に大して興味もない、アメリカ育ちのこの従弟ともそれまで全然交流がなかったので、何話していいんだかわからず緊張して、私は彼の頼んでくれたピッチャーのビールをがぶがぶ飲んでいた。当然トイレに行きたくなり、ちょっと失礼、と立ち上がると、その彼女が"I'll go with you."と言った。トイレに一緒に行くといわれたのは、日本で高校生をやっていたとき以来かもしれん、と思いながら、二人揃って2階にあるトイレに行った。ドアを開けると、そこはシンク一つ、便器一つがあるだけのせまいスペースであった。あなたお先にどうぞ、と私が言って出ようとすると、"You can stay. It's ok, I'm not shy."と言うではないか。ShyとかShyじゃないとかいう問題なのだろうか。確かに初対面の人の前で用を足せるというのは、shyではないだろうよ、I believe you. 私は心の中で結構ドキドキしながら、シンクの前で鏡を見て化粧を直すふりをしていた。で、当然彼女も私の用がすむまでトイレを出るつもりはないわけである。「郷に入っては、だわ」と生まれて初めて連れピーをした私、23歳の冬だった。
このオープンさは、アメリカ人にしたって個人差はあるとは思うけどさ。
日本のバーでも、一つしか個室のないトイレから女性が二人出てきたのを見たことがあるが、これは酔っ払って気分の悪くなった一人をもう片方が介抱していたようだった。上海の観光地(どこか忘れた)の小奇麗なトイレでは、ずらりと並んだ個室のうち、ドアが少し開いていた個室に入ろうとしたら、3人くらいわらわら人が出てきて、"Oh, I'm sorry!"と動揺して思わず謝ってしまったことがある。不思議体験。