柿が安かったので一つ買ってみた。

スペイン産である。こちらのスーパーは量り売りで、この柿は80円くらいだった。なぜ一つしか買わなかったかというと、「まさか渋柿ではないだろうな」と不安だったからだ。大学4年のとき、アメリカでスーパーで山盛りになった柿を見つけて狂喜したことがある。それまではそのスーパーで扱っているのを見たことがなかったので、こりゃあ買わねば、といくつか買った。家に帰って、その美しい山吹色にうっとりしながら、まずは一つ皮をむいた。久々の柿だわー、と一切れかじって、はたと止まった。口の中がモヨヨーンとくっついてしまう感じである。初めての感覚。なんだこれは、と混乱。すぐに口をゆすぐが、なかなかこのモヨヨーンはなくならない。この柿が熟れていないということなのか、こんなにきれいな色なのに、と別の柿をむいて食べてみた。やはりモヨヨーンとなる。即刻また口をゆすぐ。ゆすいでも簡単に取れるモヨヨンではない。いつまでも口の中にイガイガしたような感触が残る。これはもしかして、渋柿っていうやつですか、とやっと気づいた私。なんで渋柿を売ってるんだよっと帰宅してきたハウスメイトに聞いてみた。彼らは、柿は買ったことはないが、パイとかにするんじゃないのか、と言う。ほんとか。アメリカ人は渋を抜く方法を知っているというのか。当時の私は知らんかったぞ、そんなの。今でも詳しくはないが、ビニール袋にお酒と一緒に入れとくとか?最近のアメリカ果物事情は知らないが、少なくとも私が住んでいた頃、柿というのはそれほど一般的な果物ではなかったはずだ。渋柿でも見た目はとてもおいしそうなきれいな色なので、あのまま食べたアメリカ人もいるような気がする。とんでもない味の果物だと思っただろうな。
と、こういう経験があるので、フィンランドで売られている柿にも警戒していたのだ。で、剥いてみた。

中もきれいな色だ。熟れ具合もちょうどいい感じで、おいしそうだ。えい、食べてやれ、とモヨヨン覚悟で一口かじってみた。おおお、甘い。柿だ、柿。全部あっというまに平らげた。もっと買ってこようっと。