幼稚園の頃、弁当のおかずで何が好きだったかって、そりゃ文句無しに「ぽろぽろ肉」だった。挽肉を甘辛く炒めたそぼろがご飯にのっけてある。おかずって呼ぶのは変かもしれないが、とにかく好物であった。
これが弁当箱に入っているときは、母はいつも箸ではなくスプーンを添えていた。柄がピンクの半透明プラスチックだった。年長組のとき、そのスプーンで大好きなぽろぽろ肉ご飯を食べていたら、担任のミチコ先生が、「スプーンでご飯を食べるのは赤ちゃん」とみんなの前で言い、恥ずかしかったのを覚えている。もう少し大きければ、じゃあ、なんでレストランで食べるカレーにはスプーンがついてでるんだよ、と言い返せたのに。
なんでこんなことを思い出したのかと言うと、餃子かミートボールでも作ろうかとずっと前に買った挽肉をいい加減調理せねばと解凍し、結局面倒なので、ぽろぽろ肉にしたのだ。で、ご飯にかけて大きいスプーンで食べた。ミチコ先生のことを思い出し、わざとスプーンにしてみた。
ぽろぽろ肉があったら、ご飯3杯はいける。いかなかったけど。でも寝る前の今になって、冷蔵庫にまだ残りのぽろぽろ肉が入っていると思うと、また食べたいと思っているいけない私がいる。こういうときは、腹回りを手で掴んでみると現実に引き戻され、こんな時間に食べるのはよそう、ととどまることができる。はずである。
とりあえず、歯を磨いてしまおう。