昨夜、NHKの「一期一会」という番組の再放送をやっていた。違う価値観や人生観を持つ若者が会うというやつ。ときどき見るが、おもしろいと思う。
昨夜は、東大に進んで頭脳明晰の人がたくさんいる中に入り、高校までは自分のアイデンティティが「頭が良い」だっただけに、自分の存在価値を見出せずに悩んでいる二十歳の男の子が、日本全国一周の旅をする二十五歳のフリーターに会うという内容であった。どっちの彼もなかなか魅力的で良かった。悩める東大生君も、非常に素直でよい子である。気のいいやつに違いない。バイトするなり、旅行するなりして、もちっと世界を広げてやっていけば、彼は大丈夫なはず。こういう番組に出ようと思ったとこで、既に悩みの半分は解消されてるかもしれない。
で、彼を見ていて、思い出した人がいる。大学を休学しているときに英会話学校でバイトをしていたのだが、そこに一日だけレッスンを受けにきた高校生の男の子である。お父さんが海外赴任しており、今度一家でお父さんの住む国に引越すそうで、現地の学校入学に向けて、面接の練習をしたいとのことであった。地元の進学校で成績優秀らしい彼は、まじめでおとなしそうな男の子だった。クラスを取るわけではないイレギュラーな受講依頼なので、とりあえず、複数の講師が別々にレッスンするという形を取った。私は2番目だったかに受け持ったと記憶している。どの程度話せるかどうかもわからず、高校生ならこれくらいかなとレッスン資料を見繕って教室に入った。挨拶や軽いおしゃべりをしてみたが、発音完璧、こちらの言うこともすべて理解できる。だが、会話にならない。聞かれたことに短くは答えるのだが、話が膨らまない。自己紹介をお願いしても、名前と年齢と学校名くらいである。趣味とかないの、と聞けば、勉強が忙しいので、と答え、それっきりだまってしまう。勉強が忙しくなかったら何したいの、とさらに聞くと、昔はテニスが好きだったからまたしたい、と言う。お、いいじゃんいいじゃん、そういう情報をちょうだいよ、it's ok to talk about yourselfだよと言うと、そりゃーもう可愛い笑顔で頷いていた。なんつーか、勉強一本の生活のし過ぎで会話の仕方がわからなくなっているというか、英語だ日本語だって問題ではなかった。現地の学校行ったら、どういうことがしてみたいかと聞いてみると、今はする時間のないスポーツをやりたいと言っていた。スポーツに興味がないからしないっていうのならともかく、勉強が忙しいからスポーツをあきらめるという状況が異常だ。彼が若者らしく生きるためにも、その進学校から出るのは良い選択だったような気がする。ま、現地の学校でどういう生活をしたのかは知る由もないが、一期一会の彼と同様、笑顔の可愛い素直な子だったので、今幸せならいいなあ、と思ったりした。若くして留学して屈折してなきゃいいけど、あたしみたいに。くくっ。