二つの祖国〈上〉 (新潮文庫)

二つの祖国〈上〉 (新潮文庫)

まだ上巻の途中なんだが、いやー、なんつーか、ふさぎこんでしまっている。パールハーバー直後からの日系アメリカ人の話で、1世の人たちの苦労、2世や3世のidentityや、日本でもアメリカでも受ける差別や、日系人収容所での話や、読んでいて非常につらい。涙が出るくらい。Pが「何ため息ついてんの」と聞くくらい、暗くなっている。
なんでこんなにつらいのかと言うと、こんな大変な思いをしてアメリカで生きてきた日系の人たちの歴史を私はほとんど知らず、なんて無知なんだ、あたしは、と情けない思いをしているというのがひとつ。当然、収容所のことは知ってはいるが、表面的なことしか知らない。大学で関連するクラスを取ったこともないし、正直言って、当時の私には興味のない話だった。
もう一つ、これが大きな理由なんだが、私にはカリフォルニアに日系アメリカ人の遠い親戚がおり、彼らのことを思い出したから。全員2世や3世で、日本語はほとんど話せない人たちだったが、日本からアメリカの高校に留学しているという17歳の私が夏休みに訪ねたとき、親戚だからということで、めっちゃくちゃ親切に接してくれた。家を訪ねればお土産までくれ、まだ英語が不慣れな私に片言の日本語で話しかけてくれ、もう、今思い出すとほんっとーに本当にとてもよくしてもらったにもかかわらず、馬鹿な餓鬼だった私は、その後ろくに親交を暖めるという努力もしなかった。親切にされっぱなし、というそれが恥ずかしいという気持ちを強く思い出したのと、彼らも苦労してアメリカで生きてきたのだなあ、としみじみ思うのとで、なんだか涙が出るのである。
大体、当時は「なんでこんな知らない人たちの家に連れて行かれるんだ」という気持ちの方が大きかった。どう血がつながっているかもわからないような遠い親戚なのに、と思ったり。そんな遠い親戚なのに彼らはアホなティーンエージャーの私に優しく接してくれたのだ。もう、当時のあたしを殴りたいね。
明日帰るという晩、泊まらせてもらっていた人の家で私のためにパーティーまで開いてくれたのだ。そこへ集まったのが、これまたまだ会っていなかった親戚やその友人の人たち。おまけに皆さん、私に日本へ持って帰れと手土産まで持ってきてくれたのだ。
泊まらせてもらった人にはサンキューカードくらいは書いたとは記憶している。だが、他の親戚の人たちは連絡先も聞いてなかった。どひゃーである。
あれから23年経って、あらためて私はなんつー無礼な餓鬼だったんだ、と恥ずかしい。

中、下巻と読み続けるうちにもっと暗くなったらどうしよう。