大学のとき、「この人、研究だけしてればいいのに。教えるのには全然向いてない」と過半数の学生に批判される教授がいた。論文はたくさん書いているらしく、業界では有名人のようだったし、非常にインテリな女性なんだとは理解できたが、とにかく講義がつまらん、何が言いたいのかわからん、独善的で意志の疎通能力低し、と私も非常にいやな思いをしながら講義を受けた。
その学期が終わった数ヵ月後、男性が一人でやってる個人事務所みたいな旅行代理店で帰国する航空券を買った際、非常にtalkativeなその男性は、大学や旅行の話などを色々話し始めた(ほとんど自慢話だった)。すると、どういうきっかけだったか忘れたが、この男性がこの教授のことを知っているということがわかった。ああ、その先生なら講義取りましたよ、I hated the classと言うと、その男は"You must have done badly in the class then."と笑ったのだ。"は? I got an A."と答えると、"Oh... Anyway, she is a character, isn't she?"とかなんとか言っていた。
何が言いたいのかというと、何かを嫌いだからと言って、その何かが不得手とは限らんだろうということなのだ。なんでこのクラスが嫌いだった理由を成績が悪かったからに違いないと判断するのか、まったく予想しなかった反応で面食らったほどである。(ま、この男に言い返すためにも、Aを取っておいてよかったと思ったけどさ。)

当時、この話をメリケンの友達にしたら、失礼な男だとすごく怒って、「あたしだったら、Aを取ってなくてもAを取ったって言ってやるわ」と息巻いていたのがやたらおかしかったのも今思い出した。嘘つかなくても。

なんでこんな古い話を思い出したかと言うと、Mちゃん(10歳)が学校の宿題でやった編み物がPのアパートに置いてあり、それが10歳にしては本当に上手に出来ていたのでほめたら、「でもじっと編んでるのって退屈で嫌い。宿題だから仕方ないからした」と言ったからである。家でじっとしているよりも、自転車に乗ったり、乗馬のレッスンに行ったり、犬の散歩に出かけたり、外で体を動かす方が好きなようである。

まあ、微妙に私の話とはずれているとはいえ、ふと思い出したってわけよ。

逆に「得意じゃないけど好き」というケースもあるだろう。私の場合、簡単なお菓子を作るのが好きである。特に上手というわけでもない。適当に作る。凝ったものをがんばって作ろうとか、そこまでする興味はないが、好きなことは好きである。

特に興味もないし、好きでもないし、得意でもないといえば、料理だ。苦痛。食べないとお腹がすくし、外食ばかりするお金もないから仕方なく何か作るが、しなくていいならしない。日本で一人でいれば、別にシリアルを夕食にしてもなんとも思わないような女である、あたしは。

一人ではないフィンランドでは、何かと食べることを考えねばならず、正直苦痛なのである。別に私が料理担当と決まっているわけではないのだが、Pは超多忙だし、となると家で仕事をする人間にこの役が回ってきやすいわけである。

滞米時、「料理は一切しない」という40代の女友達がおり、実際料理はすべて彼女の夫がしていた。夫がいないときに夜たまたま遊びに行くことがあったのだが、そのときは「今日は彼がいないからピザね」と宅配させていた。私はそこまで「絶対料理はしない」というほどではないが、ここまで徹底していた彼女がちょっとうらやましいかなと思ったりもする。

話がずれてきた。今晩なに食べるんだ。