お昼はPの叔母さんVのお宅へ。ヘルシンキから車で1時間くらいのところにある古都Porvooの近くにお住まい。Pが子供の頃は、お祖父さんとお祖母さんが住んでいて、自然豊かな環境にある非常にナイスなコッテージだったらしい。Vさんが数年前に引越してきてからは、仕事はヘルシンキであるし、出張も多く多忙のため、なかなか庭の世話などができず、草ぼーぼーで、「家はtake careしないとああなる、ということがよくわかった」とPが残念がっていた。
確かに、メンテがちゃんとできていれば絵本に出てきそうな家である。かまどまであったもんね。アンティークのすってきな食器棚があってadmireしていたら、「他の家具は泥棒に盗まれたんだが、この棚は大きくて泥棒も持っていけなかったみたいだ」とVさん。彼女のご両親が使っていたアンティークの椅子やテーブルなど全部持っていかれたらしい。
驚いたのは、この家には水道が来ていないということ。井戸が裏にあったのだが、「なんか知らないけど汚染されて飲めなくなっていた」らしく、近所の人の井戸からもらってくるらしい。台所のカウンターに小さいタンクが置いてあり、そこに溜めておくとか。お皿を洗ったりするのはどうするんだと思っていたら、紙皿だった。「紙はすぐ捨てられるからいいのよ」と豪快に笑うVさん。確かに。流水で洗ったりしていては、タンクの水はすぐになくなってしまうだろう。
「トイレはポータブルの水で流せるやつがあるから、心配しないで行きたくなったら言って頂戴」と言う。それは彼女の書斎の隅っこに置いてあった。豪快だ。膨大な数の本があり、「地震のない国でよかったねえ」と言うくらい、本棚に詰め込まれていた。インテリなトイレ空間。使わなかったけど。
ボウルに集めた生ゴミは、裏口のドアをあけて、ばっと投げていた。自然に返すわけである。
肉じゃがに似たキャセロールとサラダをご馳走になり、デザートは姫りんごのような小さいりんご。親戚の家のりんごの木からもいだものらしかった。「これにチーズを巻いて食べるとおいしいのよ」とブロックのチーズをどーんとテーブルに置き、ささっとスライスしたものをくれる。確かに濃厚なチーズとしゃりしゃりとさっぱりしたりんごのコンビはおいしかった。
個性的な家に住む個性的でエネルギッシュなVさん。「変わってるから」とPは言うし、確かにそうかもしれないが、she has her own styleでかっちょいいと思った。

帰りは古都Porvooのカフェでカプチーノとケーキ。時間があまりなくて町を見る時間はなかった。もっとも、日曜だったのでお店はほとんど閉まっていたが。ここにある有名な古い大聖堂は、酔っ払って、雨どいに火のついた新聞をつっこんでみようと思いついた馬鹿な若者3人のせいで、火事で屋根が燃え落ちてしまっている。今年の5月のことらしい。たわけが。屋根はタールを塗ってある木で作られており、そのタールが雨どいにも垂れてきていたため、火はあっという間に屋根まであがったらしい。火事になった数日後、自首してきたらしい。実際に新聞紙を雨どいにつっこんだ男だけ懲役3年の刑で服役しているとか。プラス、修理費負担。刑務所から出ても、一生払い続けるわけである。ものすごい額だろうから。
きれいな川、かわいい建物がたくさんあり、今度またゆっくり来たいと思った。ヘルシンキに向かう高速の近くに、ショッピングセンターを作るとかで広い土地にブルドーザーなどが置いてあった。いやだなあ、古都にショッピングセンターなんて、と言うと、最近そういう開発が進んでいるとPが言っていた。

ヘルシンキにたどり着くまでには、まさにバケツをひっくり返したような大雨。晩御飯は日本食レストランに行く予約をしていたのだが、こんな雷雨だし、私は家にいたかった。だが、Mちゃんが「焼肉が食べたい」と目を輝かせていたので、雷がピカピカ光る中、ヘルシンキへ。フィンランド日本食屋の焼肉とはどんなのだ、と思ったら、うーん、薄くスライスし牛肉をプルコギっぽくテーブルに置いた鍋の蓋みたいな鉄板で焼いて食べるというものだった。日本の焼肉店で食べるものと比較してはいかんのだろうな。まずくはなかったけどさ。前菜に卵焼きが食べたいというので頼んでみたが、これがまたえらく甘いの。おまけに色が白っぽい。水で延ばしすぎでは。Pと私は天ぷらを頼んだが、新しいものにトライするのが苦手なMちゃんは、断固として拒否。ひたすら肉を焼いて食べていた。それもタレにもつけずに。あと白いご飯。シンプルだわ。
以前、PがMちゃんと二人でこの店に来たとき、すき焼きを頼んだらしいのだが、もう絶対いやだというくらいMちゃんの口にはあわなかったらしい。甘いからかな。ここのすき焼きがどういう味付けか知らないが、私も一度アメリカの日本食店で食べたすき焼きがあまっとろしくていやだと思ったことがある。
このお店、いつも予約が取りにくいし、ずいぶん人気のようである。別にすごくまずいというわけではないけど、まあ、日本人から言わせれば、「外国の日本食」なのよね。おまけにサービスが非常に遅い。忙しいのはわかるが、待たせすぎ。頼んだものがなかなか運ばれてこないので、帰りは9時半になってしまった。明日学校があるMちゃんは疲れきっていたしな。
Pがおごってくれたので、文句を言うのも失礼だからだまっていたが、焼肉も天ぷらも本当はもっとおいしいはずなのに、と残念であった。まあ、焼肉って、韓国料理なんだけどさ。