Kaye2005-06-11

一昨日MP3プレーヤーを買った。COWONのiAUDIO. 下調べは一切せず、ちょっと見るだけ見ようかくらいの気持ちで電器店に寄り、結局買ってしまった。何も知識がないまま行ったので不安であったが、店員は感じよかったし、説明も丁寧でわかりやすく、納得した上での買い物が出来た。
帰宅して、早速パソコンにつなげようとUSBポートのカバーを開けようとしたら、ぼろぼろと割れた。あれ、これはtemporary coverで、is it supposed to crumble like this?と不思議に思ったが、マニュアルの絵を見ると、どう見てもパカッと開くカバーのようである。割れたプラスチックの破片がポートの中に入り込むし、溶けた感じでべたべたしている。こりゃー不良品だわい、とすぐに店に電話をし、レシートに名前が書いてあったさっきの店員Nさんを呼び出してもらった。事情を説明すると、「あ、それは絶対交換させてください」と力強く言う。「絶対」をそこで使うのがおかしかった。話が早く通じてよかったわと安心し、「それでは明日の午後うかがいます」と言って電話を切った。
次の日の午後、不良品とレシートを持って店にでかけた。売り場のレジに行くと「実習中」という名札をつけた娘が立っている。Nさんをお願いしますと言うと、「今日は休み・・・」と、答えるではないか。休みぃ?私が「明日の午後行く」と電話で伝えた時点で、「明日は私は休みをいただいているので店にはいないが、わかるように他のものに伝えておきます」くらい説明があってもいいんじゃないのかと思い、これではNさん、交換品があるということも伝えていないなと、どっと暗い気分になった。話は簡単に済むと思って来たのに、全部説明せねばならない。またこの実習中の店員が、語尾まではっきり話さない小娘であることがさらに私の気分を暗くさせる。"This is gonna take awhile."
不良品だったので交換しにきたんですが、と言うと、その小娘は馬鹿面を下げて「はあ」と上目遣いに言う。自分でも左の眉が3ミリくらいつりあがったなというのがわかる。やはり交換品があることなど何一つ聞いていない。「では、最初から説明いたしますとね」と私の声は超アルトになる。実習中ということを差し引いても、この娘の応対の悪さはすごい。気が利くような機敏な動きをしているようで、実は生産的なことは何一つしていないというタイプ。私の不注意で壊したんじゃないということの証拠に、ぼろぼろに割れたカバーの破片をラップに包んで持っていったのだが、それを手に取るとうさんくさそうに見て、次にレシートを私の手からひったくるように取り上げてexamineする小娘。だが、結局何をしていいのかわからず、「少々お待ちくださいっ」と、シャキシャキとしているようにみせたいのだろう、早口で言い、近くに居た男性店員に指示を仰いでいる。その男は「全部箱ごと渡して」などと言っている。その時点で、この男は、不良品をつかまされた客がわざわざ交換しに来店していることを知ったわけだから、こんな要領の悪い役立たずの新人に任さず、自分で応対に出てくるという配慮が欲しいなあ、と思うが、そこはI'm asking too muchなのであろう。別に接客中で忙しいわけでもないのに、その男はただ単に突っ立ったままであった。
小娘は戻ってくると、新しい商品を渡すだけですまそうとするので、「中身を確認してよろしいですか。何度も来たくありませんので」とすかさず言う私。声はさらにアルト。「ああ、はい」と箱を私に渡す娘。は、開けるのは私なわけね。本体のUSBカバーをあけてみると、ちゃんとパカッと開く。私は納得し、「大丈夫なようですね」と言い、箱に戻す。娘がその箱を私が持ってきた紙袋に入れようとするが、口が閉じているので入らない。そこで、客の私が、口を開けてholdしてやる。娘の口からはすみませんの一言もない。不良品を渡したことに関する謝罪もまったくない。いくら新人でも、客に迷惑がかかっていることくらいわかりそうなもんだが。What is this? ここはアメリカか? 新人だと思って我慢していたが、もう何も口にしたくないくらいこの娘の態度に不機嫌になっている私。今文句を言っても、感情的にしか話せないだろうと自分を抑え、かろうじて会釈をして売り場を去った。
ああ、直接何かを言ってやるべきだったのか。でも謝罪をしろといっても、何を私が不満に思っているかわかるような頭の回転の速そうな娘ではないし、そこで表面的な謝罪を受けても不満は残るだろうなあ、と思いつつ1階に降りた。
やっぱり気がすまないので、総合案内所で「苦情の目安箱みたいなものはありますか」と聞いてみると、案内の女性は申し訳なさそうに、そういうものはなく、責任者を直接呼ぶか、店のサイトからメールを送ってもらうことになると言う。なんじゃそれは。直接口頭で文句を言われてその場で頭下げるだけじゃ、問題の解決や再発防止の策などにつながらないんじゃないの、と思うし、書面で苦情を訴えたいと思うのは私だけではないはず。デパートみたいに「お客様の声」という箱があれば、苦情だけでなく、要望、お礼などももっと客が気軽に言えると思うんだがね。まあしょうがない。じゃあ、メールでたっぷり文句言うたるわい、と帰宅した。
感情的なクレームほど効果のないものはこの世に無いと思うので、あくまで淡々と事実を書き連ね、私の感じた不満を訴えた。このメールに返事が必要かどうかをチェックする欄があり、どうせform letterでの謝罪が返信されてくるくらいだろう、と思い、不要のところにチェックマークをして送信した。
言いたいことを落ち着いて論理的に書くことができたので、気分はすっきりした。プレーヤーも問題なく機能するし、嬉しくなってどんどんCDを落として遊んだ。音もいいし、こんな口紅サイズのちっちゃい機械にこんなたくさん曲が入るなんて、と感動した。
メールを送って3時間くらい経った頃、玄関チャイムが鳴った。インターフォンを取ると、電器店のものだと名乗る。名前は知らない人だ。はあ、どういったご用件でしょう、と聞くと、先ほど売り場で失礼があったとメールをいただき、ご挨拶に参りましたと言うではないか。うっわー、早いっ!すっごいなあ、と真剣に驚いてドアを開けた。人のよさそーなおじさんが、「私、あの売り場のマネージャーをしておりますMです」と名刺をくださる。「貴重なご意見を賜ってどうのこうの」と頭を下げるMさん。いやー、まさか苦情を出した数時間後に家まで来るとは思わなかったので、驚きまくりの私である。ちゃんと内部での連絡がきちんと取れていればよかったのと、応対した店員がわかっておらず、ご迷惑をかけ、わざわざ来店してくださったのに不愉快な思いをさせてしまいすまんかった、というようなことをおっしゃって、おわびの品まで出すではないか。いや、そこまでしていただくなくても、と「二度とこういうことがないようにしていただければそれで結構ですから」と言って断ったのだが、彼としても、ああそうですか、と渡さずに帰るわけにもいかない。「いえ、ほんの気持ちですので」と言ったところで、ではいただいておきます、と受け取った。「プレーヤーの使い方でわからないことがあったらいつでも聞いてください。」とMさんは笑顔でおっしゃり、一礼をして帰っていった。
頭下げときゃいい、というような営業っぽい謝り方ではなく、誠意を感じる謝り方であった(それも訓練か?)。店を出るときには、もうここでは買い物はしない、というくらいプリプリしていた私だが、この対応の早さに感心した。店員はダメダメだったが、フォローはさすが日本。お客様は神様。もしアメリカでこういう店員に当たったとしても、私はここまで不愉快に感じなかっただろう。何も期待していないから。あの国で、気の利くサービスなど期待していては血管が切れてしまう。
お詫びの品をもらったから許したんじゃないよ。ちなみに中身は立派な木の箱に入ったソウメンであった。