何かを悩んでいる人に向かって、「そういう悩みを持っているのはお前だけではない」と言って励ましているつもりの人間を見ると、「もっと建設的なコメントはないのか」と言いたくなる。その人以外にも同じ悩みを抱えている人がいるからどうだというのだ。さらに話を進めて、その他の人たちがどういうふうにその悩みを解決したか、などと言うのならまだしも、結局、「他にも悩んでいる人はいるんだから、お前の悩みは特別ではない。ゆえに我慢しろ」と言っているようにしか聞こえない。

悩んでいる張本人は、「私以外にも同じような悩みを持っている人はたくさん世の中にいるのよね」と、一人じゃないの〜♪などと勇気付けられて、窓を開けて小鳥のさえずりを聞いて微笑んだりするのだろうか。悩み自体が解決されたことにはなってないだろうに。

胃潰瘍で胃に穴が開いた人に向かって、「胃癌で苦しんでいる人も大勢いるのだから、お前は幸運だった」というのも、「え?」と思う。そりゃ、胃癌と戦っている人は大勢いるだろう。だが、今現在、その人は胃に穴が開いて入院しているわけで、それも結構つらいものではないかと想像する。死を間近に感じる病気ではないのかもしれないが、胃に穴だよ、穴。その人より重病な人のことを例に出して、あんたは幸運だと思うべきだ、と健康な人がコメントするというのは、余計に穴が大きくなりそうな状況だと思うのだが。

愛する人を失い、非常に落ち込んでいる女性に向かって、「あなたは靴がないと言って落ち込んでいるけれど、世の中には足が無い人もいるのだ」と言ったという例を知っている。Yes. Right. So? 足の無い人もつらいだろうが、足があって靴が無いというのも、かなり惨めだと思うのだが。自分より不幸な状況にいる人のことを思って、「私はあの人たちより恵まれている。あの人達も勇気を持って生きているのだ、私もしっかりしなくては」などと考えて元気を出すのは結構だが、there is a fine line between that and 「私はあの人たちよりマシだ。あの人たちほど不幸じゃなくて良かった」 自分の状況をより苦境にいる人と比べるということは、かすかな傲慢さを感じて、聞いてるとなーんとなく胃の辺りがもやもやすんのよね。