外耳炎で耳鼻科に通っている(アニュアルイベントと化している)。待合室で順番を待ちながら、後ろに座ったお母さんが息子に絵本を読んでいるのを聞くともなく聞いていた。ウルトラマンなんとかは、身長58メートル、体重5万なんやらトン。え、ずいぶん重くないか、と一瞬思ったが、そうか、ウルトラマンはウルトラなマンなわけで、ただのデカイ人間じゃないのよね、と気付く。そんなに重いのにどったんばったんと町の真ん中で戦われちゃ、周辺の住民はたまったもんじゃないなあ、などと考えていたら、絵本を読み終えたお母さんが、「先生が鼻をモシモシさせてって言ったら、ちゃんと見せるのよ」と言う。子供の頃は私も聴診器のことをモシモシと呼んでいたが、鼻をモシモシとは、こりゃまた新しい。名前を呼ばれてその親子は診察室に入り、男の子はこの世の終わりかというくらいの大声で「痛いよー」と泣き叫んでいた。モシモシじゃすまないからね、耳鼻科は。ギュイーンとか、シューッとか、キーンッて感じか。その泣き声が響く中、この間も見た3歳くらいの女の子が中待合室で静かに絵本を見ている。診察室からこんな凄まじい叫び声が聞こえてくるのに、不安にならないのかなと不思議に思う。そういえばこの間、彼女こそ「痛いことするのはやめてーっ」と医者に懇願しながら大絶叫していたのであった。今日も痛いことをされるかもしれないのに、この落ち着きようはなんだ。母親に笑って話しかけてさえいる。ぐったりと叫び疲れた男の子が出てくると、彼女の番。案の定また「痛いのはいやだー」と泣きわめいている。先生の姿を見ると思い出すのかもしれない。お母さんは「もう、何もしてないのに騒ぐのやめて」とうんざりしたように叱っている。お母さんたちも病気の子供も大変。

この騒がしい診察室で、えらく淡々と冷静に仕事をこなす先生が妙におもしろい。どれだけ子供が騒ごうが、あやすわけでもなく、怒るわけでもなく、イライラするわけでもなく、常に冷静沈着なのだ。私は点耳薬を入れてもらった後、しばらくじっと横になっていなければならないのだが、その間、診療室の先生と患者のやり取りがどうしても聞こえてくる。「いつごろからこの症状はでましたかあ?」などとしり上がりに質問を次々としていき、さっと診断をくだし、薬の説明をし、最後に「えっと、なにか聞きたいことはありますかあ?」と言う。質問をされれば詳しく答え、「はい、では今日はこれで」と締めくくって終わり。決して愛想がいいわけではないが、感じが悪いわけでもない。まじめーに効率よく診療をしていき、うーむ、プロじゃ、と思う。良い先生である。

ひとつこの耳鼻科に行くのがいやなのが、入るとスリッパに履き替えなければならないことだ。必ずソックスを履いて行き、帰宅と同時に脱いで洗濯機に投げ入れる。靴を脱がなければならない個人医院は多くあるが、あのビニールのスリッパはいただけない。スリッパを殺菌する機械に保管しているところもあるが、大抵の場合、靴箱に置いてあるだけである。ソックスを履いていても気持ち悪いのに、それを素足で履いている人を見ると、うひゃーと思う。今の季節はサンダルを履いている女性も多く、誰が履いたかわからないスリッパをそのまま素足で履いているのだ。Beyond beliefである。書きながらも鳥肌が立つ。靴のままで入っていい医院が増えないかなあ。