大学時代に、母と大学生の娘(20)が住む家の一部屋を借りていたことがある。the stupidest people I metというリストを作ったら、いまだもってそのトップ10には入る二人で、毎回バカな行動・言動をするたびに私は友達に報告して爆笑をとるという、ありがたいネタ提供者であった。全身麻酔で抜歯と書いてこの娘キンバリーを思い出した。ある日、親知らず4本を全身麻酔で抜いた娘は、夕方母親に連れられて帰宅した。私は自分の部屋にいたが、普段からとてつもなくでかい声で話す母親(中学の家庭科の教師で、家の中でも体育館にいるかのごとくでかい声で話す人だった)と、くぐもった娘の声が聞こえたので、ああ、今日は歯を抜くと言ってたな、と思い出し、でも別に見舞いに行くこともせずに部屋で勉強を続けた。日も落ちて暗くなった頃、母親がでかける車の音がし、15分くらいで帰ってきた。特に気にも留めていなかったが、キンバリーの部屋からなにやら話し声が聞こえ、すぐに母親はまたでかけたので、変なの、と思っていたら、ドアをノックする音。"Come in"と言うと、キンバリーが立っている。一応"Hi, how are you feeling?"と声をかけてみる。すると彼女は、"Can I talk to you for a sec?"となにやら深刻。なんじゃいなと思って聞いてみると、抜歯後の痛みがおさまらないので、痛み止め(処方箋)をいつも行く近くのドラッグストアに母親に取りに行ってもらったのだが、薬剤師が間違えて、いつも頼んでいる薬の方を渡してしまったと言う。そのいつもの薬というのが避妊薬。母親は気づかずそのまま持って帰って娘に渡し、娘は仰天して、それが痛み止めではないことを説明しなければならなかったらしい。ピルを飲んでいることは母親には言っていなかったし、どうしよう、さっきは何も言われなかったけど、絶対あとで何か言われる、と不安がっている。やっぱりアホだなあ、と思ったが、真剣に悩んでいるようだったのでちょっと気の毒に思った。そこで、「こんな形でばれてしまったのは何だけど、ピルを飲むこと自体は責任ある行動だと私は思うし、私が母親の立場なら、避妊をまじめに考えていると思って安心するけどね」と答えた。これは本心で言った。そう聞いて彼女は"you think so?"とまだちょっと不安げだったが、"OK, thanks."と言って、部屋に戻った。どこまでもおもしろいなあ、この人達、と一人笑ってしまった。

その後、この母娘の間でこの件がどう話し合われたのかは知らない。翌朝、いつも車で向かえに来てくれていた同じクラスのVickiに道中この話をすると、ハンドルを叩いて笑っていた。

しかし、こうやって人を笑ったネタを書いていると、ばちが当たって今日の抜歯で痛い目にあうかもな。ほほほ。