以前、カフェでコーヒーを飲んでいたら、英語圏の国出身とおぼしき人が近寄ってきて、私のテーブルの向かいにある、誰も座っていない椅子に手をかけ、「ダイジョウブデスカ」と聞くので、思わず「大丈夫です」と答えてしまったことがある。彼は笑顔で頷いて、椅子を自分のテーブルに持って行った。言いながら、日本語違うなと思ったのだが、お互い意思の疎通はできたからいいのだ。

で、昨日、矯正歯科に行った帰りに別のカフェでコーヒーを飲んでいたときのことである。メモ帳を広げて、抜歯・非抜歯のpros and consを書きながら悩んでいると、向かいの椅子がいきなりススーっと動く。「あん?」と思い顔を上げると、隣のテーブルに来た娘が、自分の座る椅子がなかったものだから、無言で私のテーブルの椅子を取っていったのである。一言断ってから持っていくのが礼儀であろう。なんという育ちの悪い娘だ、と思い、隣のテーブルを見ると、母親らしき人と一緒である。近所のコンビニにもその格好はきつくないか、というような激しく毛玉の出来た真っ赤なモコモコカーディガンを着ている母親と一緒に、不機嫌な顔をしたその娘はコーヒーをすすっている。中学生なのか、高校生なのか、はたまた二十歳過ぎた成人なのかよくわからない。日本人女性、というか、アジア人女性は若く見える人が多いものだが、この娘はアメリカなら間違いなく子供料金で映画館に入ることができる風貌である。子供だと思えば、無礼も仕方ないのか。日本人は礼儀正しいなんて大昔のことのような気がするわ。