洗面所の鏡の前で大口を開け、懐中電灯で左下奥を照らしながら、飛び出たワイヤーのチェックをした。この間よりさらに出てきたような気もするので、やっぱり切ってもらいに行くかなあなどと考えつつ、ふと視線を口元から顔全体に移したときに驚いた。口が以前より大きく開いている。おお、これは倒れていた奥歯が起き上がったおかげで、口を大きく開けることができるようになったのか。矯正開始前の検査のとき、先生に「思いっきり口開けて」と言われ、言われたとおりにしたつもりだったのだが、「あれ、これだけ?せまいな。もっと開かない?」と聞かれた。顎が外れるくらい開けている状態だったのに、あら、やっぱりあたしってお上品だからだわ、と思っていた。せいいっぱい開けて、指3本を縦に入れるのは難しかった。それが、今は3本ちゃんと入る。変わるもんですな。

8年前くらいのことだが、口がほとんど開かなくなったことがある。ある日突然、指1本入るくらいしか口が開かなくなり、驚いて近くの歯医者に行った。原因が何かと言われたかどうかもはっきり覚えてないのだが、歯を食いしばっていることを指摘されたような気もする。とにかくマウスピースを作るということになった。そのときはそれだけで、型は次回取ると言われて予約も取った。だが、予約の日が来る前に、またいつもどおり開くようになったのだ。あれー、なんでだ、と思い当たることを考えたが、肩こりのマッサージをしてもらったことくらいしか思いつかない。きっとあれは激しい肩こりのせいだったのだと勝手に決め、ならばマウスピースはいらないと予約はキャンセルした。それにこの医者は手袋をせずに口内をいじりまわすので、気持ち悪いことこの上なかったのであった。しかし、口が指1本分しか開かない状態で、どうやって型を取るつもりだったのだろう。不思議。

今の矯正歯科で精密検査の結果を聞きに行ったとき、開かなくなったときのことを話した。院長先生は模型を使って顎の関節の動きを説明してくれ、開かなくなったのは、一時的にあるべきところに関節がおさまらずに引っかかった状態になったからで、なんらかの理由でまた元に戻ってうまくスライドするようになり治ったのだろうとのことであった。肩こりは関係ないと思うと言われた。ほほほ。どちらにしろ口の開き方は少ないということで、口の開け閉めをするときも顎の関節が多少カクカクしていることを指摘された。

今までより大きく開くようになったからといって、調子に乗って何度も口を開け閉めしてまた関節がおかしくなっては困るので、今までどおり上品におちょぼ口で暮らそう。ふ、自分で言いながら痒いわ。