これほど疲労した旅があっただろうか。

子供4人連れの夫婦のすぐ後ろの席。一番大きい子供はせいぜい5歳くらい。まだ数ヶ月の赤ん坊が泣いていないときは、他の子供が誰かぐずっているか、騒いでいる。2歳くらいの娘が何か悪いことうしたらしく、父親が娘の腕をペシッと叩いたのを見た。当然娘は号泣。突然叩いたので私はちょっと驚いたのだが、叩いちゃいかんだろというよりも、叩くと泣くからやめてよ、と思ってしまったのだった。

そしてやっと到着したと思ったら、さらにさらに疲労することが待ち構えていたのだった。入国審査で「この旅程だと、滞在期間に問題があると思う」と言われ、オフィスに連れて行かれたのである。「問題ってなんですか」と不機嫌な私。私は旅の予定をたてるとき、しつこいくらい滞在日数の計算をする。今まで6年間ずっとそうしてきた。Pがborder controlに電話をし、説明を受けたとおりに計算し続け、何の問題もなくこれまで入出国してきている。

もう話が面倒なので詳細は省くが、この審査官一人では判断できないので上司に相談するということでオフィスへ行った。そして長い長い間待たされ、結局今の滞在予定期間ではオーバーステイになってしまうので、途中でシェンゲン協定加盟国から出るといい、と言う。別に私が悪いことをしていると彼は言っているのではなく、"This is for your advantage"と何度も何度も繰り返しロボットのように言い、罰せられないためにどうしたらいいか解決策を提案している、と言う。それはわかるのだが、そもそも私は何に問題があるのか納得していない。border controlの説明により今まで計算しており問題はなかった、今回滞在期間に1ヶ月の余裕があるはずなのに、なぜオーバーステイになるのかわけがわからないと私が言うと、上司が出てきて、「We are the border control」とイラついているご様子。「だから混乱してるんじゃないですか、全然違う計算方法を今言われてるわけですから」と私。上司は、「今までの計算方法は間違っている」と断言。

正直、この人たちの英語がいまひとつ信用できない。こちらが何を言っても「Yes」と言う。日本人が話を聞くときに、「はい、はい」と返事するのと同じ使い方である。私が「私はこう理解している」と説明すると、「Yes, Yes」とうなずくので、正しいのかと思いきや、話はまたスタート地点に戻るのである。私が質問しても、そのときはYesと言っておきながら、それとは逆の内容を言い出すので再度同じ質問をすると、Noと言う。

険悪なムードで話していたわけではなく、私は冗談もいいつつ、上司も笑いつつ、表情を一切変えないのはロボット審査官だけという状況であった。私だって本当に私の理解が間違っているのであれば、正しいことを知りたい。それで結局、早めに日本に帰るか、日本に帰らずとも一度シェンゲン協定加盟国を出るか、というオプションのどちらかを実行すれば問題ない、ということで入国スタンプを押してもらった。「予定をたてるときに何日滞在できるか確認のために、うちに電話すればいい」とオフィスのカードもくれた。「I hope you have a good stay here」と言うロボット。

夜、ロボット審査官が私の滞在期間を紙に図にして書いたものをPに見せたら、「こんな計算はおかしいだろ」と言い、すぐ電話。あまりに疲労のために「もうどうでもいいです。言われたとおりに早めに日本に帰るか、ロシアにでも行くから」という気分の私。15分くらいフィンランド語で話をしていたPは、笑いながら電話を切る。「今までの計算方法であってるって。日程を変更する必要はないって。」

・・・・。

「審査官によって解釈の仕方が違うかもしれない」とPと話した人は言ったらしい。それじゃとっても困るんですが。Pが念のためにその人の名前を聞いておいてくれた。Kさんというその男性は、こういう問題を担当する責任者という感じだった、とPは言う。「審査官が判断に迷った場合、私に質問がくるわけだから、私がちゃんと説明する」とその人は言ったそうな。正直なところ、今回みたいな目にあうのはまっぴらなので、計算方法を明確化したものをKさんのサイン入りの書面で欲しいわっ。ロボット審査官とその上司の名前も聞いときゃよかった。

しかし、話す人によってルールが違うって、日本の年金事務所じゃあるまいし、職員の理解を徹底しておいていただきたい。

で、Kさんが言うには問題はないということだが、それでも「ほんまかいな」と思って不安に苛まれているのであった。