アメリカから親戚が来日し、一緒に母方の祖父母の墓参りに行って来た。30年ぶり。ごぶさた〜、じーちゃん、ばーちゃん。なにしろ遠いのだ。だが、実家から歩いていけるお寺にある父方の祖父の墓にももう10年以上行っていない。I'm not religiousということもあるし、彼らのことを思い出すことはお墓に行かなくともできるし、実際してるし、といくらでも言い訳はできるのだが、久々にお墓に行って、花を生けたり掃除をしたりして、なんとなくこういうことをするのもいいなと思ったのだった。
最後にお墓に行ったときは、父の運転する車であった。父はいまだに運転はするが、遠出をしたり、人を乗せるということはもうしない。親戚3人、母、私の5人で、行きは電車、帰りは高速バスを利用した。初めて乗る路線で、小旅行気分でおもしろかった。
緑が美しい田園風景であった。伯父も母もその小さな町には長く暮らしたことはないのだが、満州から引き上げてきた際、祖父が育ったその町とそこに住む親戚に大変お世話になったらしい。その親戚の家にお邪魔したのだが、これがもう、雰囲気のある伝統的な家なのだ。庭がまた純和風で素晴らしい。枯山水の世界である。その庭を広い縁側から楽しむ。ステキすぎる。うぐいすの声も聞こえる。普段の生活とは別世界である。
さらに別世界であったのが、その親戚のおばさまがお茶をたててくださったのだ。ど、どうするんだったかな、作法がわからぬっ、と心の中でパニックを起こしていたのだが、仕方ない、恥をかこう、と腹をくくった。正式な茶道の空間というわけではなく、和室のテーブルを皆で囲んですわり、おばさまが順番に立てたお茶を出してくれるという形であった。アメリカ生活60余年の伯父は、女性を先に通したり座らせたりすることが徹底しており、私を先に奥の席に座らせようとした。「いや、おじさん上座へ」と言うと、「なーに言ってんだ。そんなこと気にしない」と笑って、女性陣を先に座らせた。私達は気にしないが、そういうことを気にしそうな家にお邪魔していたので、私は緊張していたのだ。伯父の息子(私の従兄)の娘Sちゃん(中学生。私の「いとこ違い」というらしい)が今回初来日で、クオーター日本人である彼女にルーツを見てもらうための旅でもある。思いがけない伝統文化の経験に、本人もアメリカ人の伯母も大喜びであった。なんといっても、このおばさまは、茶道と華道を長年教えていらしたのである。書道も段をお持ちである。90近いという年齢を感じさせないシャキシャキとした話し方である。
「お椀は2回こういうふうに回すんだと思う」と隣に座っていたSちゃんに囁きながらデモをしていると、おばさまは「自分の方へ回すの」と回す方向の間違いを指摘。はい、先生。そしてなぜ回すのかを説明(お椀の正面で飲むことを遠慮するんだって。ああ、美しいhumility)。他にも色々教えていただき、非常に勉強になった。お茶もとてもおいしく、全員おかわり。
あたし、中学校1年のとき、1年間茶道部だったということはばらさずにおいて良かった。本当に見事に何も覚えていなかった。こういう風に伝統文化に触れると、いいなあ、習おうかなと思うのだが、すぐ忘れるのよね。へっへー。