なんと申しますやら。

大学病院に行ってきた。簡潔に書くと、レントゲンだけではわかりにくいので、CTも撮り、その結果と今後の治療について来月話をすることになった。今日の時点では、根管の再治療か、歯茎の骨と歯根の状況によっては歯根の先を切る外科的処置という二つの選択肢について聞いた。嫌だな、手術だったら。

teaching hospitalだから、診療時に学生や教授の弟子達がいるのはわかっていた。診察室に入るとぞろぞろいたので、誰がどういう立場なのかわからなかった。私の記入した問診表を見ながら症状の確認をした人は、名札に「歯科医師」と書いてあったので、歯科医師なんだろう。しかし、きっと患者を診るのは初めてだったに違いない。そうとしか思えなかった。もう対応が不安で不安で。問診表に「根幹治療後の痛みがとれない」と書いておいたのだが、しばらくだまって紙を見つめていた彼は「まあ、こういうことぉ、ですよね」とぼそっと言う。痛い歯がどこかを書くときも、「右」を書いてしばらくしてから「上」を書いていた。よほど緊張していたのか。「上」って字がわからなかったわけじゃあるまい。「番」の書き順、間違えてたよ(細かい)。小さい声でぼそっと話すので、こちらから聞き返すこともあった。私はあまりソフトな口調で話さない女なので(話せない)、たぶん、それでもっと萎縮させてしまったような気がする。すまんね。
次にその先生が、今の歯の状態を調べた。上から順番に健康な歯か治療歯かみたいなことをチェックするやつね。新しく歯医者へ行けば最初にやるチェック。そしてこれもメモを取るのと同様、時間がかかる。白い詰め物を入れた治療歯をノーマルと言っていたので、思わず「それは治療してます」と言ってしまった。すまんね。

その後レントゲンを撮り、しばし待つ。どういう診療システムになっているのか今ひとつわからなかったので、まさかさっきの先生が担当なのだろうか、と大いに不安を感じていると、診察室から別の若人が出てきて、しゃきしゃきと「お入りください」と案内。中では教授先生が私のレントゲンを見ており、周囲にそのゆかいな仲間達の弟子達が立っていた。私が来る前に色々とディスカッションをしたらしく、歯のイラストで説明をしたような紙などがあった。

今まで転院してきたときと同様、これまでの治療経緯をまとめた紙を渡しておいたのだが、それがえらく評判になっていた。教授は、「非常によく書けていて、一体どんな人なのか恐いと思った」と笑う。お上手。ゆかいな仲間も一緒に笑う。仲間の中に、こういう風に自分も書けるようになりたいと言った人がいるとかいないとか。最初の先生かな。

歯科医や衛生士から聞いた専門用語を少し使っていたので、医療従事者かと勘違いされたらしい。まあ、「打診痛」とかそのレベルなんだが。でもまあ、だらだらと口頭で説明して途中で何話してるかわからなくなるより(よくあるのよ、あたし)、ちゃっと紙1枚にまとめて読んでもらった方がいいと思って準備していたので、喜んでいただけて何よりだよ。

根を治しても、上下前歯の歯の当たりが強い問題があるので、痛みが取れるには長くかかるだろうと教授。「矯正のバランスがどうなのかなあという印象です」とのこと。それはショック。かなりショック。根が治ったら、再矯正か???? 知らないよ、あたしゃ。

CTは予約制なので、別の日に撮りに来るかと聞かれたのだが、できれば今日中に済ませてしまいたかったので、空きがあるのであればお願いしたいと伝えた。じゃあ、放射線科に確認してくると若い先生が走って出て行き、教授は「ちょっと待ってくださいね。今、叱られに行きましたから」と笑う。急に予約を入れようとすると嫌がられるのだろう。ゆかいな仲間達も笑う。いや、申し訳ない。別に空いてないのに無理矢理予約を入れろとリクエストしているつもりはなかったのだが。結局、3時間後に予約が取れるとのことで、そのようにお願いした。「そんなに待つ?何もないよ、ここ」と教授は笑い、また仲間達も笑う。

で、3時間何をしたかと言うと、ちょっと歩いて美術館に行ってきた。めちゃくちゃおもしろい展覧会やってたよ。日本中のケッタイな場所や人の写真とその説明。いやあ、美しくなくて、はちゃめちゃで、愛すべきおもしろい国だよ、日本は、と思った。アーティスト(というか、ご自身は自分はジャーナリストとおっしゃっていて、確かにそうだと思うし、民族社会学者とも言えるかも)のブログを見つけた。展覧会に関する特設サイトはここ。おもしろそうな人だ。

この特別展を出たところで、ビデオアートが流れる暗い部屋があった。誰もおらず、一人でスクリーンを見ながら、歯のことを考えてちょっと泣いた。

その後、病院に戻り、無事CT撮影。前歯だけということであった。NクリニックでCTは保険外で2万円と言われていたので、ここもそうかなと覚悟していたが、今日の料金は全部で8000円くらいであった。CTも保険扱いだったみたい。良かった、ここで撮ってもらって。8000円のうち、2625円は紹介状が無いから払ったお代。「選定療養費」っつーんだってさ。H歯科では、大学病院に行くのはあくまで選択肢の一つで、薦めているわけではないから紹介状は書けないと言われたのさ。この部分も治療経緯に記述しておいたのだが、教授は「ここがいいですよね」と読み上げていた。いや、勝手に私だけの判断でのこのこやってきたのではなく、一応歯科医の意見で、ということを伝えておきたかったのだ。

「まだ担当医を決めてないけど、CTの画像の話は私がします」と教授。是非教授にお願いしたいところだが、若人の経験も必要だろう。利発そうな女性医師が仲間達におり、しゃきしゃきとまとめ役のようなことをしていたのだが、彼女だったら任せてもいい。正直、最初の先生は恐い。
あら、今日はえらく長い。最初に「簡潔に書くと」と書いて終わるつもりだったのに。