Pのフォーミュラの練習に一日付き合う。朝8時前に出て、11時にサーキットに到着。来るはずだったPの整備士が来れないことが判明。昨日、奥さんから携帯に離婚したいとメールが着て、取り込んでいるそうだ。人生いろいろ。
で、誰が整備士かと言うと、私である。車には触らなくていいというからついてきたのに。バンの中で読もうと、本まで持ってきていたのに。整備士といっても、本当に車の整備をするのではない。そんなもん、できない。私の仕事は、まずは車をトレーラーから下ろすのを手伝うこと。重いんだから、フォーミュラの車。「fortunately this is only 600 kg.」とつぶやいているのが聞こえた。fortunatelyだったのか。知らなかったよ。ま、重いっつって、背中にかついで下ろすわけじゃないんだが、マニュアル作業には変わりない。トレーラー後部から地面にかけて板を二本平行に置き、板の上にタイヤを載せて車を地面にroll downするわけである。後輪にそれぞれ私とPが張り付き、Pが車輪止めを少しずつずらしながら車をさげていくわけだが、ずらす間は私がしっかりタイヤを押して、車が下がってこないように支えるわけである。おまけにそのときの私は素手。終わった後に「あ、手袋いる?」とP.遅いんだよ。
次に、毎回サーキットにPが出る前に、車に乗り込んだPのシートベルトを締めてやり、ヘルメットや手袋を渡し、エンジンがかかったところでバッテリーのコネクターを外し、OKサインを出して見送るというもの。簡単そうでしょ。でもこれもまた力がいるのである。バッテリーのコネクターなんて、どんなにギコギコ引っ張っても抜けなくて、「私にこの仕事は無理ですっ!」と叫んだくらいである。何度かやって慣れたらコツがわかったんだけどさ。右手に力を入れたもんだから、右手首痛いです。バッテリーを抜くのはエンジンがかかった後なので、ものすごい爆音がする中、エンジンのすぐ近くでギコギコしなきゃいけないのが怖くてさ。「あたしは家でジャズを聴きながら本を読んでいたかったよ」と最初の方は落ち込んでいた。
シートベルトとなると、もっと力がいるのである。各肩から引っ張ったベルト2本を股の部分でまずはlatchさせる。これは私でも問題なくできる。が、この肩を抑えているベルトをぐっと調整してtightenする力が私にはないのである。Pもさすがにこれは、「誰か男の人に頼んで」と要求。私達のバンの隣にいたオートバイレースの練習をしていた親子らしき男性二人に「excuse meeee」と当然のように英語で助けを求める私。すみません。そして当然のように英語で返してくれるお父さん。ありがたすぎる。"I'm strong!"と笑いながらシートベルトを締めてくれた。いい人だ。息子はまだ中学生くらいだったが、お父さんと一緒に手伝ってくれた。次からもシートベルトを締めるときには、お父さんが居ない場合は、通りがかりの男の人などに頼んでやってもらった。皆さん気さくで親切だった。
Pが走っている間は、いつものとおりフォトグラファー係。速いスピードで動いているもののいい写真はなかなか難しいわ。何枚かはいいのが撮れたのでよしとする。(Pがいやがるので載せられない。)
あ、もう一つ仕事があった。Pが一度砂地へスピンアウトして牽引車で連れて帰ってきてもらったのだが、その後「掃除だ」と掃除機を渡された。バンに掃除機が積んであったんで、なんでかなあと思っていたのだ。こういうときのためなのね。まずは空気で砂を飛ばし、その後飛ばしきれなかった砂を掃除機で吸う。すっごい砂だらけだったよ。すなわち、私も砂だらけ、ホコリだらけ。サーキットに化粧やオサレは不要だと断言する。日焼けしないようにパディントンベアみたいな帽子を深くかぶり、UVカットのジョギングジャケットをしっかり首までジッパーあげて着ていた私。帽子は完全に場違いであったが、そんなこといってらんないからね。日焼け止めも4、5回塗りなおしたよ。
何周かラップを終えて帰ってきたら、タイヤの温度と圧力測定の記録係である。Pたちの車が走った後はオートバイが走る番なので、次に車が走る時間までは自由時間。トイレに行って日焼け止めを塗りなおしたり、本も少しは読めた。さすがに3時間後には暑さと疲労でぐったりしてしまい、バンのシートに横になってしまったが。暑いったって24度くらいなんだが、日差しが強いので疲れるのだ。
「あともう一回走ったら終わり」とPが言ってきたときには、「ええ、まだ走るの」と内心思ったのだが、なんかタイムが順調に伸びて好調だったらしいんで、だまって付き合うことにした。なんてサポーティブなあたし。
で、その後また車をトレーラーに積んで帰路に着く。途中でよったバーガー屋でサングラスを外した私を見てPが「おーーー、ハニー」と気の毒そうな声を出す。はい?と思ってPを見ると、こう言われた。
"I'm sorry if my hobby makes you age faster."
あんたねっ!
それがさ、風と太陽に一日中当たっていたせいなのか、ルメネの日焼け止めを目の近くまでたっぷり塗っていたせいかわからないが、目がちかちかして開けていられず涙まで出てくる状態だったので、トイレで顔を洗った後だったのだ。目の周りが突っ張る感じだなあと思っていたのだが、「all wrinkled up」だったらしい。ちっ。
しかし、確かにhis hobby does make me age fasterだ。こんな日に当たるのなんて、小学生以来かもしれん。こんなに手伝ったので、Pは非常に感謝はしているようである。お礼はなんにしてもらおうかしらん。