フィンランドである。今回の旅は長かった。すごく。
関空を定刻どおりに出発。飛行機は割りと空いていて、私の列も私一人。寝転がってられるわー、と喜んだが、他の人が反対側の通路席に移ってきたので、遠慮して膝を折って2席分だけ使用。
10時間後ヘルシンキ上空へ。着陸準備に入る。しかし、悪天候で許可が下りない。しばらくぐるぐるまわっていたが、いきなり高度が上がるのを感じる。あれ、なんで、と思ったら、機長のアナウンス。着陸したい飛行機が多すぎてこれ以上飛んでいられないので、20分離れたタンペレ空港へ行って給油しますとのこと。えー。んもう、しょうがないわね、とかばんに入れた本をまた取り出して読む。
タンペレ着陸。給油作業にしばし待つ。結構時間がかかる。乗務員がジュースや水を配り始める。あちこちに携帯電話で連絡を取っている人がいる。旅行会社の関係者か、いろんなところに電話をして状況説明をしている日本の人もいた。大変だわ。私もPに電話。仕事を抜けてヘルシンキの飛行場まで迎えてに来てくれていたというのに。夜は仕事のディナーがあるのでタクシーで家まで帰ってくれとのこと。了解。
しばらく本を読んでいると、機長が、「給油は終わったが、機体の除雪作業をしなくてはならないので、もうちょっと待ってね」とアナウンス。外は真っ白である。降ってるし積もっている。
またしばし待つ。除雪終了アナウンス。しかし、またその後待たされる。しばらくすると、「一機着陸したい飛行機があるので、その着陸を待って、その後離陸するからもうちょっと待っててね」と機長。少なくとも、もうすぐヘルシンキへ戻れる、ということで、機内は一安心な雰囲気。飛行機はランウェイへ移動。
が、なかなか離陸しない。するとまた機長の"Ladies and gentlmen"の声。なんかいやな予感。「油圧系統の故障アラーム点灯。点検せねばならぬので、ターミナルへ引き返します、ごめんね。」 機内はため息。
眠い。もう6時半過ぎ。着陸は3時半の予定だったのに。疲れて眠いが、お腹も空いてきた。途中、プレッツェルとチョコレートを乗務員が配ってくれたが、おやつではなくちゃんとしたものが食べたいなあと思っていたら、サンドイッチを配り始めた。手に取ると、5ユーロの値札付き。タンペレの空港で買ってきたんだろうて。全員に行き渡っていたのか不明。私の反対側の通路側の人のとこまで行っていなかった。
疲労に朦朧としながらサンドイッチを食べていたら、"Ladies and gentlemen"と機長。いいニュースじゃないなと直感でわかる。「すっごいゴメン。この飛行機、飛べません。ヘルシンキまでのバスを用意したのでそっちに移動してけれ。」機内は不満の声だらけ。
まじですかと思いながら、コートを着て出る準備をする。出口のそばで並んでいたら、フィンランド人のスチュワードが、外は寒いからマフラーを頭にかぶったほうがいいよとジェスチャー付きで言う。帽子もってなかったからね、あたし。雪の中を歩く必要はないと思ってたんで、スーツケースに入れてたのよ。スーツケースは後でヘルシンキまで届けるとのことである。
タラップを降りて、ターミナルまで歩くわけである。雪も降ってるし、風も強いし、数センチは積もってるし。日本の人は「なんか痛い寒さ」などと話している。そんな中、ジャンボ機のこんな近くに来るチャンスはなかなかないということだろう、写真を撮っている人もいた。元気だなあ。
ターミナルに着いても、一体どうすればいいのやら。なんとなく奥へ進むとパスポートコントロールが。皆さん、どうしていいのかわからない様子でただ立っている。やっぱり、ここでパスポート見せなきゃ飛行場から出られないよねと思い、インスペクターのところへ。入国のスタンプを押してもらう。Tampereの文字。いつもはHelsinkiだからね。たまには違うやつを。
その後ロビーに出たら、ヘルシンキへ行く人のバスはあれだよと案内をしている係員がいた。白い大きな観光バスっぽいやつに乗り込む。ぞろぞろと皆さんも乗り込んでくる。
客室乗務員が、乗継の人はホテルで降りてください、ヘルシンキで降りる人はそのまま空港まで乗ってくださいと案内。最後にいつもの癖だろう、"Have a pleasant journey"と言い、乗客全員、苦笑。彼女も、きゃー、ごめんなさい、という感じで、"If I may say so"と笑う。
出発前にバスの運転手が英語で挨拶。雪も降ってるし、運転しにくいので、ヘルシンキまで2時間半くらいかかると思うとのこと。全員、力なく笑う。
隣の席の白人の女性に話しかけてみると、パリへ飛ぶはずだったそうだ。Finnairを利用したのは初めてだそうで、「こういうのよくあるの?」と聞く。いやあー、よくじゃないだろうけど、一回トラブったわね、とエピソード紹介。私はあまりの疲れと時差ぼけで、妙にハイパーになっていて、ほとんどの人がぐったりと眠っている中、彼女としばらくおしゃべりした。京都にお住まいらしい。カリフォルニアで育ったというので、私は大学がカリフォルニアだったよ、という話から始まり、色々話がはずんだ。
時計を持ってなかったので、本当に2時間半かかったかどうかわからないが、まずはホテル到着。隣の人は、がんばってね、バイバイと手を振って降りていった。ほとんどの人が乗り換えなので、バスはガラガラ。その後空港へ。そこでどこへ行っていいかもわからず、皆さんとウロウロ。Finnairのカウンターでスーツケースのことを聞くと、よくわからないからインフォメーションへ行ってくれと言われる。インフォメーションの人に事情を説明すると、おお、OK,じゃ、こっちからバゲージクレームの領域に入ってくれ、と鍵のかかったドアを開けてくれる。入ってみてどこへ行きゃいいんだと見回していると、一緒にいた男性が、「こっちのカウンターで手続きするんだと思うよ」と言う。彼がそこにいた係員に説明すると、「お待ちしてたわー、結局飛行機はまだタンペレなのよ。スーツケースは後日送るから、書類の手続きしてちょうだい」との返事。くーーっ。
スーツケースの見た目、送り先などの情報を渡す。「ごめんね」と謝る係員。確かに鬱陶しいトラブルではあるのだが、そんな中でもプロセスそのものはスムーズだなと思う。バスもさっさと準備されていたし、係員もてきぱきしてるし、efficientである。Well, 褒め言葉はスーツケースがちゃんと届いてからにするか。
その後、タクシーに乗ろうと飛行場を出ると、長蛇の列。ちょうどフライトが到着した後だったらしい。前と後ろにタバコを吸っている人がいて死にそうだった。マフラーをマスク代わりにしてうつむいて我慢。
延々と続いていた列ではあるが、次々とタクシーが来るので動くのは早い。案内されたタクシーに乗って、行き先を告げる。やれやれである。しばらくして運転手さんが"Was your flight on time?"と話しかけてきたので、"Oh, no. NOT AT ALL."とI emphatically denied it. 状況を説明すると、ちょうど4時前くらいに雨と雪のまざったストーム状態だったとのこと。それで着陸できなかったのね。「タンペレは雪だらけだったけど、ヘルシンキは全然積もってないのね」と言うと、タンペレの方が寒いのだと言う。それにしても、「37年ヘルシンキに住んでいるが、この時期に雪がないなんて初めてだ、海も凍ってないし」と異常気象を嘆く。確かに、ヘルシンキの道路はただ単にぬれているだけで、雪はない。
30分程度でPの家到着。やさしい運転手さんは、"Have a good rest, and have a nice last day of the month"と言う。後半がおもしろい。
玄関へ向かって歩いていたら、別のタクシーが来た。Pもご帰宅である。今何時?と聞いたら、もう真夜中過ぎていた。7時間遅れか。疲れたよ、あたしゃ。
あまりに疲れていたので、Pが買っておいてくれた薔薇の花も"oh, nice."と気の無い感想だけで済ませてすぐ寝てしまい、今朝、「せっかく喜んでもらえると思って用意してたのに」と上目遣いで苦情を受けた。ごめんよ。
考えてみたら、日本に帰るときは長時間飛行機に乗った後、2時間以上かけてはるかと新幹線で広島まで帰るわけであるが、ここまでの疲労感はない。やっぱり、このやたらと待たされるってのと、同じ2時間でもバスでの移動ってのが疲れるんだろうな。
乗継だった皆さんも、無事目的地に到着できることを祈る。