といっても自分のものではない。実家の父が、祖母の電気ポットの蓋が朽ちてものすごいことになっているので、新しいものを買ってきてくれ、と言ってきた。店に直接行くのが好きではなく、通販で済ますことの多い彼であるが、即、今、すぐに新しいのが必要、でないと危ない、というくらいボロくなっているため頼んできた。
「複雑な機能のないもの、今のポットとあまり変わらないもの」という条件を聞き、電器店へ。店員に「94の祖母が使っているポットが壊れまして」と言うと、即行彼女は、「それでは前のに似たのがいいですね」と返事。Exactly!! 素晴らしい反応ではないか。She knows what she is talking about. 前のポットは、7,8年くらい前の製品。それ以来、ポットは進化している。保温温度の設定が出来たり、省エネ機能があったりして、ボタンの数が多少増えている。だが、ロック解除と出湯ボタンは目立つように別の色をつけている機種が多く、店員さんも、この二つさえわかっていれば、他のボタンは無視すればよいという。確かに保温温度は先に設定しておけば、ほかはいじらなくてよい。この際、省エネも無視。ずっと高温で保温しといて。前のポットにもロック解除はあったので、そこは同じである。そこで、コンパクトなナショナルのポットに決めた。前のも同じく2.2Lであったが、新しいほうが背が低くて小さく見える。狭い食卓の上に置くので、これはナイスである。
ただポットを渡したのでは絶対に素直に受け取らないことはわかっているので、先月のbelated誕生日祝いだ、ということで渡した。それでも、「んまー、悪いわ」「いいの、誕生日なんだから」のexchangeをat least ten timesやった。「なんだか、モダンになった感じ」と嬉しげであった。
彼女は耳が激しく遠いので、使い方の説明は、耳元ではっきり、ゆっくり行わなければならない。沸騰するとこの赤い電気が消えるんだよ、などと説明していたとき、ちょうどお湯が沸騰してきた。「ほら、ぶくぶく沸騰する音がしてる」と言いつつ、「しまった、そんなこと言っても聞こえないよな」と思ったら、一瞬、祖母はポットに少し耳を近づけるふりをし、「聞こえるわきゃ無いよ」と笑った。ときどきこういう笑いを取るのがうまい。
古いポットを見ると、一体全体、どうしたらこんなになるのかというくらい、蓋が朽ちている。蒸気が出るところから中が見えるのだっ。蓋と開けると、プラスチックに熱を加えたような不快な臭いがする。それでも、「前のポットだってまだ大丈夫なのに」と仰天発言をする祖母であるが、「だーめー!危ないでしょ、あれはもうゴミだからね」と部屋から出した。置いておいたら、まだ使うかもしれないからね。
大体この間会ったとき、「お湯で火傷した」と人差し指に薬を塗っていたのである。ポットのせいかどうかはわからないが、可能性はありと見ている。それでも「たまには焼いとかんと、腐るかもしれんし」と笑っていた。冴えてるなあ。
ポットの隣に置いてある炊飯器がこれまたアンティークなのであるが、さすがに新品のポットの隣にあるのを見て、「ボロなのが目立つね」と言い始めた。だが、「でもまだ使えるから」と言う。これまで2台新しい炊飯器を渡したにも関わらず、結局使っていない。私が買った1台目は彼女の妹にあげ、もう1台は実は2年前に私がかっさらっている(with my father's permission, as he bought it for her)。箱に入れたまま放置してあったので、持って帰らせてもらったんだわ。サンキュー。

こんな話をPにしたら、古い家電、特に湿気を伴うものは長く使うと危ないぞ、と言われ、また明日電器店に行って新しい炊飯器を買ってこようかと思っている。今あるものは、cookとwarmしかない超シンプルタイプ。それに似た製品なんていまだに売っているのか。フィンランドに行かないとないのでは(いや、バカにしてるのではなく、本当にそういうのしかデパートに並んでなかったし)。
新しい炊飯器の使い方の説明よりも、いかに受け取ってもらうか、という説得の方が大変かもしれない。叔母からの誕生日プレゼントだとでも言おうかね。